米澤穂信「愚者のエンドロール (角川文庫)」

mike-cat2006-01-15



古典部シリーズ」第2作。
氷菓 (角川文庫)」の勢いもそのままに、読みふける。
バークリーの「毒入りチョコレート事件」の本歌取りとして書かれたこの作品は、
〝名前を入れてください〟と〝まゆこ〟による、チャットの模様から幕を開ける。


ある日古典部に舞い込んだ、謎の依頼。
文化祭のクラス展示のために制作された、一本のミステリ映画。
密室殺人を描いたその作品に欠けていたのは、何と結末だった。
脚本家の急病により、急きょ失われた〝結末〟は何か?
古典部、そして奉太郎の推理がさえ渡る−。


オマージュを捧げられた「毒入り〜」を読んでいないので、
謎解きそのものに関して、評価をどうこう下せる立場でもないのだが、
それを知らずに読んだとしても、十分楽しめるミステリだ。
1作目の「氷菓」と比べると、よりミステリ感は高まった印象だ。
途中で放り出されたミステリ映画の行方を探っていくその過程は、
こちらの想像力をかなり強いレベルでかき立ててくれる。
といっても、ミステリ音痴の僕に、謎が解けるわけでもないのだが…
ただ、クリスティやシャーロック・ホームズものに造詣が深い読者は、
より深いレベルで楽しめるのだろうな、とちょいと悔しい部分もあったりする。


古典部の4人組に絡むのは、2年生の入須冬実。
およそ高校生らしくないのは、古典部の面々も含めて同じだが、
その微妙な背伸びっぷりが、今作もどこか微笑ましい。
(ちなみに、〝高校生らしい〟というのは、
 別に教育委員会的、道徳的な視点からの〝高校生らしい〟とは別)
同世代の読者にとっては、また違う感慨もあるのだろう。
だが、高校時代と言わず、こども時代は、
同世代が主人公の小説とかが大嫌いだったクチなので、
いまになって考えると、その感慨がどんなものか、微妙に想像に難かったりもする。


まあ、何はともあれ、楽しめた一冊。
続きは「クドリャフカの順番―「十文字」事件」ということになるのだろうか。
近々、読まなければ、と決意を固めるのだった。