モーガン・スパーロック「食べるな危険!!ファストフードがあなたをスーパーサイズ化する」

mike-cat2005-10-03



マクドナルドの食事だけで一カ月暮らしたらどうなるか?
で話題を呼んだ「スーパーサイズ・ミー」のスパーロックによる詳細版&後日談。

スーパーサイズ・ミー [DVD]

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全然関係ないが、マクドナルドって関東では「マック」だけど、関西では「マクド」。
正直なところ、何で「マクド」やねん? と長年思っていたのだが、
実はフランスでも「マクドゥ」というらしい(もちろん、発音はだいぶ違うらしいが…)
そう考えると、関西流の「マクド」ってのは、エスプリの利いた呼び名なのかな、などと。
本には、本当に関係ないんで、書いててアホらしくはなったのだが…


ファストフードと、グローバリゼーションの弊害を描いた本と言えば、
エリック・シュローサー「ファストフードが世界を食いつくす」がベストセラーとして知られているが、
この本はより消費者の視点に近いところから、危険性を指摘する。
つまりファストフードがどれだけ危険な食べ物で、健康を阻害するものか、という部分。
そして、消費者の健康を顧みないファストフード業界や食品業界の〝手口〟が紹介される。
かつて日本でも話題になった、〝にゃんバーガー〟だの〝ミミズバーガー〟だの、
そういった都市伝説的なヤバさとは違う、リアルな怖さが伝わってくる。


映画では、実験を開始してすぐに健康を害していくスパーロックの様子が、衝撃的だった。
本では、そういうビジュアル的な衝撃こそないが、
スパーロックの語り調で並べ立てられる衝撃の事実が、またひと味違うショックを伝えてくる。
大量消費社会の抱えるさまざまな問題点や、
巨大な広告費を背景に、メディアだけでなく政府機関までも操られている現状などなど、
フェリシティ・ローレンス「危ない食卓 スーパーマーケットはお好き?」でも紹介された、様々な歪みが指摘される。


一番怖いのは、化学薬品まみれのハンバーガーの驚異的な保存性だ。
クズ肉だけならまだしも、排せつ物まで含めて牛のすべてが混ぜ合わされ、
ありとあらゆる薬品で〝ハンバーガーらしく〟したマック製品は、
一年以上の時間が経っても、姿形がほとんど変わらないらしい。
何でも、ガラス容器に入れさえすれば、たとえ10数年の時を経ても、
色も形も損なわず、(1991年物から2003年物まで)どの年のものも変わらないという。
腐らないハンバーガー! ろう細工じゃあるまいし…


まあ、そんな感じで、次々と恐怖の事実が明らかになるのだが、
この本ならでは、の内容として何より興味深いのは、
やはり「スーパーサイズ・ミー」に関する後日談、の部分だろう。
お抱えの〝専門家〟を使って、さまざまな手段でスパーロックに攻撃を加える業界側。
せっかく来日しても、ろくにインタビューの申し込みもなかった、
日本メディアのダメッぷりなんかは、本当に情けなくてしかたなくなる。
それでも、映画のもたらした反響は大きいらしく、業界側の動揺ぶりは心地よい。
もっとも、サブウェイみたいにスパーロックを利用する会社もあるから、これまた怖くもあるのだが。


ただ、この本の素晴らしいところは、読者に絶望を与えてそれっきり、ではないところだ。
現状打破に向けて、いくつかの動きが始まっている、ということも紹介してある。
最終章の「フォークで意思表示しよう」では、
まず何から始めればいいのか、スパーロックなりの提言もなされている。
日本とは多少事情は違えど、対岸の火事では済まされない問題。
危険な食品に将来を、そして未来を奪われる前に、一読しておきたい一冊だと思う。