浅生ハルミン「私は猫ストーカー」

mike-cat2005-08-11



id:nekonyaoさんのブログで見かけた、表紙がかわいい猫本。
http://d.hatena.ne.jp/nekonyao/20050803#p3
マガジンハウスの雑誌「relax」に連載された、
「あなたの知らない猫の世界」を加筆修正したもの、らしい。
著者はイラストレーターとあって、とにかく挿絵がかわいい。
系統としては大田垣晴子系、といっていいだろう。
系、とか書いてるが、どちらがより古株か存じ上げないので、
「勝手に〜系なんてしないで!」というお怒りを買わないことを祈りたい。


表紙のクロネコ(足袋ちゃん)がかわいい。おしりの×が丸見え。
というか、やはりノラちゃんおよび外猫ちゃんのイラストとあって、
おしりは、×というより、むしろ◎っぽいかな。
外のお水は、あまりおしりによろしくないからね…


大の猫好きの作者が、市井のネコたちを、〝ねちっこく〟観察した日記だ。
時に張り込み、時に待ち伏せし、時に陰から見守る。
しかし、やっぱりついつい手を出してしまって、かわいがったりもしちゃう。
猫好き以外のヒトから見たら、まことにユルい行動なんだが、まあいいのだ。
井の頭公園に目黒川周辺、不忍池に神保町。
猫のにおいをかぎつけると、そこに参上する〝猫ストーカー〟は、
〝ねこ返し神社〟として知られる立川の阿豆佐味天神社に招き猫ゆかりの世田谷・豪徳寺
八丈島マルタ島と、遠征もいとわず、猫探しに参上する。
で、写真なんか撮っちゃったり、結局仲よくなってしまったりして、
全然ストーカー行為になってないのだが、それもまた、いいのだ。


いわゆる、「飼い猫が外で何やってんだか」ストーキングする、
みたいな部分を想像していたのだが、これはちょっと違った。
まあ、外ネコの外での行動ってのは、ナゾだからいいんで、
実際追ってみてしまうと、意外とたいしたことない可能性も強い。
ほかの家で、ほかの名前でごはんもらってる、とか、いかにもありがちだけど、
単にそこらでだらだら寝てるだけ、というオチもありえる。
ナゾだからこそいい、という部分をあまりほじくり返さない、のは賢明だ。


もっとも、僕が16年飼っている家ネコたちだって、
ヒトが出かけている間は、いったい何をしているのやら…
まあ、おそらくただだらだらと寝ているだけなのだろうが、
もしかしたら、カラオケやったり、勝手に寿司とか出前取ったり、とか、
そういう空想を楽しむことはできる。実際やられたら、稼ぎが足りないだろうけど。
一度、ビデオカメラをセットして、とも思うこともあるが、やっぱりそこはそれ。
知らぬが花(そんな言い方ないか?)というか、ナゾだからいいのだ。
ちなみに、本の中では家ネコの一日、なんていうのも取り上げている。
どこのネコも、やってることは同じだな…などと思いながら、ほくそ笑む。


ほかにも、〝秘伝! 猫に取り入るテクニック〟やら
〝これだけは守りたい猫ストーカー七戒〟がまとめてあったり、
ストーキングした結果、でき上がったネコ地図のイラストがあったり、とか、
非常に遊びの効いた構成も、まことに楽しい。
ネコへの深い愛情とともに、その偏愛を面白がるシャレの効いた本に仕上がっている。
そういえば、前述の猫返し神社は、初耳だった。
ジャズピアニストの山下洋輔が、迷子にゃんこが帰ってくるようお祈りし、
それがかなったことを本に書いたら有名になったとか。


ネコが迷子になってしまった知人のエピソードもある。
あの気持ち、本当にたまらない。
うちは家ネコなんで、迷子も何もないんだが、
以前、マンションの1階に住んでいた時に、勝手にお出かけされてしまったことを思い出す。
ずっと同じ土地に住み続けるなら、外ネコ、というのも選択肢の中に入ってくるのだが、
何せ仕事柄、引っ越しが多いもので、どうしても家ネコしか選択肢がない。
よって、一度外に出ると、ネコにとってはもう全然知らない土地。
そんなトコで出かけられてしまった日には、目も当てられなかった。
近所中を探し回ったあげく、朝まで脱出口(窓)の近くで寝ずの番をしていたら、
明け方「ニャオン♪」と帰ってきたのでよかったが、思い出しただけで、胃が酸っぱくなる。


パラパラ読みする雑誌の連載だけあって、
こうして本にまとまっていると、全部一気に読み通すのは意外とヘビーだったりする。
まあ、それはパラパラと拾い読みすればいいだけの話なので、いいだろう。
わら半紙のチープな装丁からすると、
微妙にコストパフォーマンスは悪いが、ネコ好きなら、間違いなく楽しめる一冊だとは思う。
猫本100選くらいには入ってもいいかな、という感じ。
ほめてるように聞こえない? 
いや、そんなことない。巷にあふれる猫本の数と言ったら…
猫本にあまり馴染みがない、という方、ぜひに大型書店をご覧になることをお勧めしたい