浅生ハルミン「私は猫ストーカー」
id:nekonyaoさんのブログで見かけた、表紙がかわいい猫本。
http://d.hatena.ne.jp/nekonyao/20050803#p3
マガジンハウスの雑誌「relax」に連載された、
「あなたの知らない猫の世界」を加筆修正したもの、らしい。
著者はイラストレーターとあって、とにかく挿絵がかわいい。
系統としては大田垣晴子系、といっていいだろう。
系、とか書いてるが、どちらがより古株か存じ上げないので、
「勝手に〜系なんてしないで!」というお怒りを買わないことを祈りたい。
表紙のクロネコ(足袋ちゃん)がかわいい。おしりの×が丸見え。
というか、やはりノラちゃんおよび外猫ちゃんのイラストとあって、
おしりは、×というより、むしろ◎っぽいかな。
外のお水は、あまりおしりによろしくないからね…
大の猫好きの作者が、市井のネコたちを、〝ねちっこく〟観察した日記だ。
時に張り込み、時に待ち伏せし、時に陰から見守る。
しかし、やっぱりついつい手を出してしまって、かわいがったりもしちゃう。
猫好き以外のヒトから見たら、まことにユルい行動なんだが、まあいいのだ。
井の頭公園に目黒川周辺、不忍池に神保町。
猫のにおいをかぎつけると、そこに参上する〝猫ストーカー〟は、
〝ねこ返し神社〟として知られる立川の阿豆佐味天神社に招き猫ゆかりの世田谷・豪徳寺、
八丈島にマルタ島と、遠征もいとわず、猫探しに参上する。
で、写真なんか撮っちゃったり、結局仲よくなってしまったりして、
全然ストーカー行為になってないのだが、それもまた、いいのだ。
いわゆる、「飼い猫が外で何やってんだか」ストーキングする、
みたいな部分を想像していたのだが、これはちょっと違った。
まあ、外ネコの外での行動ってのは、ナゾだからいいんで、
実際追ってみてしまうと、意外とたいしたことない可能性も強い。
ほかの家で、ほかの名前でごはんもらってる、とか、いかにもありがちだけど、
単にそこらでだらだら寝てるだけ、というオチもありえる。
ナゾだからこそいい、という部分をあまりほじくり返さない、のは賢明だ。
もっとも、僕が16年飼っている家ネコたちだって、
ヒトが出かけている間は、いったい何をしているのやら…
まあ、おそらくただだらだらと寝ているだけなのだろうが、
もしかしたら、カラオケやったり、勝手に寿司とか出前取ったり、とか、
そういう空想を楽しむことはできる。実際やられたら、稼ぎが足りないだろうけど。
一度、ビデオカメラをセットして、とも思うこともあるが、やっぱりそこはそれ。
知らぬが花(そんな言い方ないか?)というか、ナゾだからいいのだ。
ちなみに、本の中では家ネコの一日、なんていうのも取り上げている。
どこのネコも、やってることは同じだな…などと思いながら、ほくそ笑む。
ほかにも、〝秘伝! 猫に取り入るテクニック〟やら
〝これだけは守りたい猫ストーカー七戒〟がまとめてあったり、
ストーキングした結果、でき上がったネコ地図のイラストがあったり、とか、
非常に遊びの効いた構成も、まことに楽しい。
ネコへの深い愛情とともに、その偏愛を面白がるシャレの効いた本に仕上がっている。
そういえば、前述の猫返し神社は、初耳だった。
ジャズピアニストの山下洋輔が、迷子にゃんこが帰ってくるようお祈りし、
それがかなったことを本に書いたら有名になったとか。
ネコが迷子になってしまった知人のエピソードもある。
あの気持ち、本当にたまらない。
うちは家ネコなんで、迷子も何もないんだが、
以前、マンションの1階に住んでいた時に、勝手にお出かけされてしまったことを思い出す。
ずっと同じ土地に住み続けるなら、外ネコ、というのも選択肢の中に入ってくるのだが、
何せ仕事柄、引っ越しが多いもので、どうしても家ネコしか選択肢がない。
よって、一度外に出ると、ネコにとってはもう全然知らない土地。
そんなトコで出かけられてしまった日には、目も当てられなかった。
近所中を探し回ったあげく、朝まで脱出口(窓)の近くで寝ずの番をしていたら、
明け方「ニャオン♪」と帰ってきたのでよかったが、思い出しただけで、胃が酸っぱくなる。
パラパラ読みする雑誌の連載だけあって、
こうして本にまとまっていると、全部一気に読み通すのは意外とヘビーだったりする。
まあ、それはパラパラと拾い読みすればいいだけの話なので、いいだろう。
わら半紙のチープな装丁からすると、
微妙にコストパフォーマンスは悪いが、ネコ好きなら、間違いなく楽しめる一冊だとは思う。
猫本100選くらいには入ってもいいかな、という感じ。
ほめてるように聞こえない?
いや、そんなことない。巷にあふれる猫本の数と言ったら…
猫本にあまり馴染みがない、という方、ぜひに大型書店をご覧になることをお勧めしたい