東野圭吾「毒笑小説 (集英社文庫)」

mike-cat2005-06-12



本日帰阪。
新横浜は、バルセロナ−横浜Fマリノス(だったかな?)
の観客でごった返している。ううん、最悪…


先日の「怪笑小説 (集英社文庫)」の続編。
〝毒〟と銘打っているだけあって、というか、悪乗りがエスカレート、
さらに笑えるブラックユーモア短編集に仕上がっている。


冒頭の「誘拐天国」からして、なかなかいい感じだ。
日本有数の財閥を率いる老人たちが、
塾やお習いごと漬けで遊ぶ間もない孫のために、狂言誘拐を試みる。
もともと金銭感覚がおかしい人たちが、
その財力にモノをいわせまくって、コトを進めるから、すべてがコミカルだ。
どこかもの悲しいオチは、苦笑も浮かぶが、悪くない。


南洋で発見された新生物「エンジェル」をめぐるひと悶着は、
藤子・F・不二雄のSF(すこし・ふしぎ)系の短編にも通じる味わい。
人間という生物そのものの根源に迫るようなテーマだが、
堅苦しさがなくって、これまた軽い感じで笑い飛ばせる。


「マニュアル警察」が、個人的にはこの短編のベスト。
カッとなって女房を殺した〝俺〟が、自首のために警察を訪れる。
だが、やたらと責任だの、効率だのが問われるこのご時世、
警察も徹底的なマニュアル方式を導入していた、という笑えない話。
何しろ、自首だって何段階かの手続きを踏まなきゃ、させてもらえない。
殺人犯を名乗り出たオトコが、いつまで経っても逮捕されない状況で苦悶する。
特別に斬新なアイデア、とはいわないが、
東野圭吾一流の悪ノリで軽妙な一編に仕上がっている。


「誘拐電話網」は、斬新なアイデアが生きる一編だ。
突然かかってくる、誘拐の身代金要求電話。
誘拐されたのは、何と〝赤の他人〟だという。
放っておけばいい、はずなんだが、
微妙に良心をとがめるような物言いをされて、困り果てる。
そこで取った行動が…、というやつ。
オチは見えているんだけど、なるほどな、と感心させられる。


まあ、こんな感じで相変わらず軽く笑わせてくれる12編。
何となく集中力の足りない時の読書に最適だ。
読み終わって、何か特別な想いが残ることもない。
だが、気分は少し軽くなったような…