書店でふらふらしていたら、

mike-cat2005-02-26

文芸誌コーナーで平安寿子の名前を発見♪
しかし、雑誌のタイトルを見て、むむむ↓とうなる。


「問題小説」だ。以前も平安寿子の小説読みたさに買ったことあるが、
けっこう微妙、というか、買うの恥ずかしい雑誌だ。
今回は「女流作家が描く、〝愛の行方〟」だから、
そんなでもないが、前なんて、性愛小説特集…
レジに持ってくどころか、手に取るのも恥ずかしいかも。


いや、官能小説も載ってるんだけど、全部が全部じゃない。
普通に、オトコとオンナを描いた小説もたくさん載ってる。
しかし、赤字で「問題小説」はけっこうヘビイだ。
何とかならないかなぁ、と思いつつ、表紙を下にしてレジに持っていく。
エロ本みたい。むかし、そんなして買ってたっけ(恥)
ほかにもあさのあつこ岩井志麻子
唯川恵前川麻子…となかなか豪華布陣。
いや、もっと買いやすくしてくれれば、とちょいと複雑な想いに駆られる。


でも、けっきょくきょうのレビューは、
題材が題材だけあって、けっこうエロエロちゃんかも。
いや、あくまで題材によるもので、ぼくがどうこうでは…
と、一応言い訳しておく。こういうのを語るに落ちる、というの?


ちなみに、平安寿子の短編は「問題な関係」。
何だ、雑誌のタイトルのまんまじゃないの…
40に手が届きそうなホテルプランナーの千鶴と、
十五年来の友だち付き合いのある、歳下のオトコ、哲史のお話だ。
中堅ホテルの女性向けプラン開拓に活躍してきた千鶴が、
こんどは〝大人のラブホテル〟をイメージしたホテルをプロデュースする。
ラブホといえば、当然(じゃないかもしれんが…)二人で使うトコロ。
となれば、オンナの欲望、だけでなく、オトコの欲望にも焦点を当てなければ。
ということで、オトコの欲望を知るべく、哲史にインタビューしていく。


書き出しがとんでもない。
哲史が、千鶴に説明するのは、
〝大きいか、それほどでもないか、あるいは、はっきり言って小さいか。
 それが男にとってどれほどの大問題か、女には永遠にわからない〟
いきなり断言だ。えっ、そうなの(笑)? 
で、説明は続く。
〝だからといって、他者のそれと並べて比較検討するという
 科学的振る舞いに出るわけにはいかない〟
そりゃ、そうだろ。
ゲイでもないのに、オトコ同士大きくして並ぶなんて…
と思ったら、比較検討しない理由は違った。
〝比較した相手が自分のより大きい場合、
 受ける精神的イメージが堪え難いからだ〟
そうなんですか(笑)? 勉強になりました。


かっこつけるワケじゃないが、まあ、僕の場合、
こういうオトコ本位があまりに過ぎる性的ファンタジーには、
かなりげんなりするタイプなので、
〝SIZE DOES MATTER〟信仰には、ちょっとついていけない。
こういうこと書くと、「お前、小さいんだろ」とか言われるの?
比べたこともないから、わかんない。


そんなオトコ本位のファンタジーについて、
千鶴が哲史につめよるシーンが笑える。
ちょっと引用長くなる
&かなりえげつないので、18歳未満は読んじゃダメよ♪
「ねえ、男って結局、自分はなんにもしなくても、
 女のほうから抱きついてきて、キス一回くらいですぐにひざまづいて、
 ズボンをおろしてパンツを脱がせて、×ェ×チ×(※筆者自粛)して、
 こんなに大きいものがわたしの中に、かなんか言って、
 自分から紐みたいなパンティー脱いで、男にまたがって、
 すごい、あなたってすごい、イクイクと大騒ぎして、
 必ずバックからもさせて、中に放出されたら、
 あまりの恍惚に死んだようになる。
 それで終わりって、こういうセックスをしたいわけ?」
僕はしたくないけどな…
確かに、そんな詳しくないけど(ホントよん)、
一般的な官能小説とかAVのイメージってこうかな。


千鶴の追及は続く。
「蜜壺からあふれる愛液をすすると、彼女はこらえきれずに…
 ってたった五行よ。三ページもフ×ラ×オさせといて。
 …それからはすごいとイクのオンパレード。
 女が何人も出てきて、この繰り返し。
 大体、この主人公はセックスばっかりしてて、いつ仕事してるのよ」
仰る通りですな。しかし、5行と3ページの比較も笑えるが、
蜜壺ってのも、いやはや何とも…の世界だ。
まあ、ファンタジーだし、それが好きな人もいるから、とは思う。
それと現実を区別できない人がいるのが、問題なだけだから。


ちなみに、こうした二人の会話は、完成間近のホテルの一室。
〝ダブルベットに二人で座り、まわりには誰もいない。
 ときは昼下がり。カーテンを開けてあるから部屋は明るいが、
 そんなもの、立ち上がって閉めてしまえばすぐ暗くなる。
 なにしろ、情事用に設計された部屋なのだ。
 壁も床も暗色にしてある〟
つまり、千鶴は哲史と、一線を越えるべく、誘惑してる。
それなのに、何にも起こらない。〝問題〟はそこにあったのだ。


ここからのふたりの会話に、平安寿子ならでは、の味が出る。
迫る千鶴、オトコの気持ちがわかってない、とはね返す哲史。
その押し問答が、とても深い。
深いだけでなく、笑えたり、ふむふむだったり。
導入部で、刺激を受けた脳細胞のえっち担当部分が、
いろいろな思索をめぐらせる。やはり、面白い。


おしまいは、とかいって書いてしまってるが、
書いてしまっても、小説の面白さを阻害しないと思うから書いちゃう。
〝友達から恋人へ。恋人から友達へ。
 融通無碍。
 それが男には永遠にわからない、女の柔軟性というものだから。〟
大きさにこだわるオトコとは、ずいぶん違いますな。
と思いつつ、
しかし、僕的にはすごく理解できるような気がするのだが、どうして?
やはり、メンタリティが女性寄りなんだろうか、
というか、事実そうだろうな、とは以前から思ってるけど。


で、小説はやっぱりすごくいい。
さすが僕のフェイバリット作家さん、とひとり悦に入る。
いや、恥ずかしい想いをしても買ってよかった。
さて、残る官能小説にも手を出してみますか…
いや、あくまでついで、ね。ついで。
ほら、せっかく買ったんだから、と言い訳。
さっきも書いた気がする。これも、語るに落ちる?