書店でふらふらしていたら、
文芸誌コーナーで平安寿子の名前を発見♪
しかし、雑誌のタイトルを見て、むむむ↓とうなる。
「問題小説」だ。以前も平安寿子の小説読みたさに買ったことあるが、
けっこう微妙、というか、買うの恥ずかしい雑誌だ。
今回は「女流作家が描く、〝愛の行方〟」だから、
そんなでもないが、前なんて、性愛小説特集…
レジに持ってくどころか、手に取るのも恥ずかしいかも。
いや、官能小説も載ってるんだけど、全部が全部じゃない。
普通に、オトコとオンナを描いた小説もたくさん載ってる。
しかし、赤字で「問題小説」はけっこうヘビイだ。
何とかならないかなぁ、と思いつつ、表紙を下にしてレジに持っていく。
エロ本みたい。むかし、そんなして買ってたっけ(恥)
ほかにもあさのあつこ、岩井志麻子、
唯川恵、前川麻子…となかなか豪華布陣。
いや、もっと買いやすくしてくれれば、とちょいと複雑な想いに駆られる。
でも、けっきょくきょうのレビューは、
題材が題材だけあって、けっこうエロエロちゃんかも。
いや、あくまで題材によるもので、ぼくがどうこうでは…
と、一応言い訳しておく。こういうのを語るに落ちる、というの?
ちなみに、平安寿子の短編は「問題な関係」。
何だ、雑誌のタイトルのまんまじゃないの…
40に手が届きそうなホテルプランナーの千鶴と、
十五年来の友だち付き合いのある、歳下のオトコ、哲史のお話だ。
中堅ホテルの女性向けプラン開拓に活躍してきた千鶴が、
こんどは〝大人のラブホテル〟をイメージしたホテルをプロデュースする。
ラブホといえば、当然(じゃないかもしれんが…)二人で使うトコロ。
となれば、オンナの欲望、だけでなく、オトコの欲望にも焦点を当てなければ。
ということで、オトコの欲望を知るべく、哲史にインタビューしていく。
書き出しがとんでもない。
哲史が、千鶴に説明するのは、
〝大きいか、それほどでもないか、あるいは、はっきり言って小さいか。
それが男にとってどれほどの大問題か、女には永遠にわからない〟
いきなり断言だ。えっ、そうなの(笑)?
で、説明は続く。
〝だからといって、他者のそれと並べて比較検討するという
科学的振る舞いに出るわけにはいかない〟
そりゃ、そうだろ。
ゲイでもないのに、オトコ同士大きくして並ぶなんて…
と思ったら、比較検討しない理由は違った。
〝比較した相手が自分のより大きい場合、
受ける精神的イメージが堪え難いからだ〟
そうなんですか(笑)? 勉強になりました。
かっこつけるワケじゃないが、まあ、僕の場合、
こういうオトコ本位があまりに過ぎる性的ファンタジーには、
かなりげんなりするタイプなので、
〝SIZE DOES MATTER〟信仰には、ちょっとついていけない。
こういうこと書くと、「お前、小さいんだろ」とか言われるの?
比べたこともないから、わかんない。
そんなオトコ本位のファンタジーについて、
千鶴が哲史につめよるシーンが笑える。
ちょっと引用長くなる
&かなりえげつないので、18歳未満は読んじゃダメよ♪
「ねえ、男って結局、自分はなんにもしなくても、
女のほうから抱きついてきて、キス一回くらいですぐにひざまづいて、
ズボンをおろしてパンツを脱がせて、×ェ×チ×(※筆者自粛)して、
こんなに大きいものがわたしの中に、かなんか言って、
自分から紐みたいなパンティー脱いで、男にまたがって、
すごい、あなたってすごい、イクイクと大騒ぎして、
必ずバックからもさせて、中に放出されたら、
あまりの恍惚に死んだようになる。
それで終わりって、こういうセックスをしたいわけ?」
僕はしたくないけどな…
確かに、そんな詳しくないけど(ホントよん)、
一般的な官能小説とかAVのイメージってこうかな。
千鶴の追及は続く。
「蜜壺からあふれる愛液をすすると、彼女はこらえきれずに…
ってたった五行よ。三ページもフ×ラ×オさせといて。
…それからはすごいとイクのオンパレード。
女が何人も出てきて、この繰り返し。
大体、この主人公はセックスばっかりしてて、いつ仕事してるのよ」
仰る通りですな。しかし、5行と3ページの比較も笑えるが、
蜜壺ってのも、いやはや何とも…の世界だ。
まあ、ファンタジーだし、それが好きな人もいるから、とは思う。
それと現実を区別できない人がいるのが、問題なだけだから。
ちなみに、こうした二人の会話は、完成間近のホテルの一室。
〝ダブルベットに二人で座り、まわりには誰もいない。
ときは昼下がり。カーテンを開けてあるから部屋は明るいが、
そんなもの、立ち上がって閉めてしまえばすぐ暗くなる。
なにしろ、情事用に設計された部屋なのだ。
壁も床も暗色にしてある〟
つまり、千鶴は哲史と、一線を越えるべく、誘惑してる。
それなのに、何にも起こらない。〝問題〟はそこにあったのだ。
ここからのふたりの会話に、平安寿子ならでは、の味が出る。
迫る千鶴、オトコの気持ちがわかってない、とはね返す哲史。
その押し問答が、とても深い。
深いだけでなく、笑えたり、ふむふむだったり。
導入部で、刺激を受けた脳細胞のえっち担当部分が、
いろいろな思索をめぐらせる。やはり、面白い。
おしまいは、とかいって書いてしまってるが、
書いてしまっても、小説の面白さを阻害しないと思うから書いちゃう。
〝友達から恋人へ。恋人から友達へ。
融通無碍。
それが男には永遠にわからない、女の柔軟性というものだから。〟
大きさにこだわるオトコとは、ずいぶん違いますな。
と思いつつ、
しかし、僕的にはすごく理解できるような気がするのだが、どうして?
やはり、メンタリティが女性寄りなんだろうか、
というか、事実そうだろうな、とは以前から思ってるけど。
で、小説はやっぱりすごくいい。
さすが僕のフェイバリット作家さん、とひとり悦に入る。
いや、恥ずかしい想いをしても買ってよかった。
さて、残る官能小説にも手を出してみますか…
いや、あくまでついで、ね。ついで。
ほら、せっかく買ったんだから、と言い訳。
さっきも書いた気がする。これも、語るに落ちる?