宮部みゆき「震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)」
きょうから2年ぶりの沖縄。
仕事の都合上、宿はやはりどぎつい感じ…
耐えられるのか、やや不安を感じたりもするが、
まあ人間、意外と何とかなるはず、と信じることにする。
チャンプルーとか、スクガラスとか、沖縄料理自体は好きなので、
おいしいお店が見つかるよう、祈るばかりだ。
人には見えない、何かが見える、岡っ引き六蔵の妹〝霊験〟お初が、
不思議な死人憑き事件に挑む捕物帳ものだ。
ひとつの事件がまたもうひとつと絡み、大きな謎に発展していくのは、
ヒット作の「ぼんくら」シリーズにも通じる味わいだ。
頑固な岡っ引き、六蔵と、その妻で一膳飯屋を営むおよし。
ある日、六蔵の両親に拾われた、という不思議な生い立ちのお初を、
六蔵夫婦は実の妹として育て、かわいがっている。
お初はもちろん、強気なちゃきちゃき娘。
ここらへんの人物造型は、定番ではあるけど、とても魅力的だ。
その特殊能力を買って、お初に捕物を以来する御前様こと南町奉行や、
赤鬼といわれた同心の息子で、本人は算学に興味のある右京之助といった、
まわりを囲む人物たちも、とても豊かに描かれている。
ストーリーを盛り上げるのに、このサブキャラクターたちの魅力も欠かせない。
だが、なによりもこの小説の面白さを引き立たせているのは、
お初の霊験能力の〝さじ加減〟だったりするのだろう。
霊験能力があるのだから、それで何でも解決できる、と思ったら大間違い。
見えるのはあくまでも、死人の妄念だとか、情念のある一部分でしかない。
それをまた、都合よく物語上で使ってばかりでは面白くないし、
あんまり出し惜しみしてもまた、面白くない。
このバランスがうまく描けているので、物語にも緊迫感が生まれる。
こういう霊験能力といえば、
郷田マモラの「きらきらひかる―浪速美人監察医物語 (File1) (講談社漫画文庫)」が思い浮かぶが、
確かに通じる部分はあるかも。
特殊能力は、あくまで問題解決のきっかけにしか過ぎず、
それは時にはミスリードの原因にもなったりする。
本作ではそこまでミスリードにはつながっていないが、
今後はそういう展開も待っているのではないだろか。
読みやすさと、物語のテンポのよさでぐいぐいと引き込まれ、
あっという間に読み終わってしまった。
沖縄到着後、目的地までの道中で本屋を見つけ、
続編「天狗風 霊験お初捕物控(二) (講談社文庫)」を買い求める。
けっこうはまってしまったかも。続編も楽しみ、というかもう、読み始めてしまった。