宮部みゆき「震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)」

mike-cat2005-02-09



きょうから2年ぶりの沖縄。
仕事の都合上、宿はやはりどぎつい感じ…
耐えられるのか、やや不安を感じたりもするが、
まあ人間、意外と何とかなるはず、と信じることにする。
チャンプルーとか、スクガラスとか、沖縄料理自体は好きなので、
おいしいお店が見つかるよう、祈るばかりだ。

人には見えない、何かが見える、岡っ引き六蔵の妹〝霊験〟お初が、
不思議な死人憑き事件に挑む捕物帳ものだ。
ひとつの事件がまたもうひとつと絡み、大きな謎に発展していくのは、
ヒット作の「ぼんくら」シリーズにも通じる味わいだ。


頑固な岡っ引き、六蔵と、その妻で一膳飯屋を営むおよし。
ある日、六蔵の両親に拾われた、という不思議な生い立ちのお初を、
六蔵夫婦は実の妹として育て、かわいがっている。
お初はもちろん、強気なちゃきちゃき娘。
ここらへんの人物造型は、定番ではあるけど、とても魅力的だ。


その特殊能力を買って、お初に捕物を以来する御前様こと南町奉行や、
赤鬼といわれた同心の息子で、本人は算学に興味のある右京之助といった、
まわりを囲む人物たちも、とても豊かに描かれている。
ストーリーを盛り上げるのに、このサブキャラクターたちの魅力も欠かせない。


だが、なによりもこの小説の面白さを引き立たせているのは、
お初の霊験能力の〝さじ加減〟だったりするのだろう。
霊験能力があるのだから、それで何でも解決できる、と思ったら大間違い。
見えるのはあくまでも、死人の妄念だとか、情念のある一部分でしかない。
それをまた、都合よく物語上で使ってばかりでは面白くないし、
あんまり出し惜しみしてもまた、面白くない。
このバランスがうまく描けているので、物語にも緊迫感が生まれる。


こういう霊験能力といえば、
郷田マモラの「きらきらひかる―浪速美人監察医物語 (File1) (講談社漫画文庫)」が思い浮かぶが、
確かに通じる部分はあるかも。

特殊能力は、あくまで問題解決のきっかけにしか過ぎず、
それは時にはミスリードの原因にもなったりする。
本作ではそこまでミスリードにはつながっていないが、
今後はそういう展開も待っているのではないだろか。


読みやすさと、物語のテンポのよさでぐいぐいと引き込まれ、
あっという間に読み終わってしまった。
沖縄到着後、目的地までの道中で本屋を見つけ、
続編「天狗風 霊験お初捕物控(二) (講談社文庫)」を買い求める。
けっこうはまってしまったかも。続編も楽しみ、というかもう、読み始めてしまった。