スーザン・シャピロ「私をふった5人の男―元カレをめぐる旅」

おしゃれな感じにはできてます



ニューヨーク・タイムズやヴォーグに担当ページを持つ女性ライター、スーザン。
40歳を目前にした彼女の悩みは結婚5年で子供ができないこと、
そして小説が売れないこと。
ある日、かつての腐れ縁の恋人ブラッド(作家)から、
書評の依頼を受けたスーザンは、行き詰まった人生を見つめ直すべく、
過去に手痛い失恋をした5人の男との再会を決意する。


これ、小説ではない。
実在のライター、スーザン・シャピロのノンフィクションだそうだ。
名前や人物描写などは、微妙にぼかしてあるそうだが。
こういう本読むのも、久しぶりだ。
オビの「人生にまよった時は別れた男に会いに行こう!」には、
ちょっと不安もあった。「自己啓発本?」みたいな。
版元、ソニー・マガジンとか、集英社とかだったら買わなかったけど、
早川書房で出しているから、クオリティはまずまずだろうし、と思ったのと、
たばこをうまく使ったカバーに惹かれ、ためしに読んでみた。
と、言い訳してどうする。


正直、一冊読んでみると、けっこうきっつい。
中西部出身のユダヤ系ならではの悩みであるとか、
そこらへんの事情にあまり詳しくないのもあろうが、どうにものめり込めない。
ただ、5人の男遍歴を赤裸々に語ったあたりはなかなか読ませる。
印象的なのは、最後の方でスーザンと親友がタバコを、オトコのアレに例えるところ。
禁煙の難しさを一通り述べた後、親友クレアの言葉が紹介される。
「〝ちょっと、私たちって毎日二十本のペニスを口に加えているのよ〟
 とクレアが一度言ったことがある。
 〝知ってる〟タバコは男根の象徴だという説に私は賛成していた。
 〝なめたり、吸うと幸せな気分になったりするところが同じよね〟」
そうですか…。ちょっとコメントしがたい感じもあるが、そうらしい。


あと、笑わせてくれるのが、現在の夫、アーロンを含めたチャート表だ。
ひそかにつけたあだ名が
「ミスター絶倫」「ハムレット」「ビーチボーイ」
「伝記作家」「歯根治療医」(これはあだ名じゃないよな…)「バットマン」。
ちなみに夫のアーロンが「バットマン」だったりする。
テレビ・映画の放送作家で、
困ったことがあるとバットマンの秘密基地「バット・ケイヴ」に逃げ込む。
しかし、過去5人の恋人の欠点がすべて「エゴ」か「エゴの欠如」なのに、
夫だけは「無精者」なのが欠点。ここらへんが、結婚までいたった要因なんだろうか。
恋愛中毒症を自認するような人物だけあって、
この5人との恋愛模様はまあ、落ちるべくして落ちて、壊れるべくして壊れた感じ。
突拍子もないエピソードもあるが、ヘンなメロドラマよりは面白い。


だけど、後段に入ってくると、微妙に本の様相は変わる。
どちらかというと、自慢話?みたいな感覚が目立ってくる。
社会的に成功していても、結婚・出産をしていなければ「負け犬」と、
逆説的に自虐してみせた例の本(読んでないけど、そう聞いてる)と、近しい内容?
「考えてみたら、わたし全然、行き詰まってないし」という自己セラピーを、
そのまんま本にされてしまった、という感じだ。
確かに、オビとかにも書いてあるとおりなんだけど、
何かなあ…。もうちょっと違う感じの本かと思ったのに、とやや失望。
やはり、読み慣れない感じの本なんて、読むモンじゃない。
女性は読んだら楽しめるんだろうか?
もちろん、僕みたいな男は始めから読者には想定されていないのだから、
当たり前なんだが、ちょっと僕にはきつかった。
どなたか女性で読んだ方、感想聞かせて下さい!!