東野圭吾「さまよう刃」

覚悟して読んでちょうだい



引っ越しって、やっぱり大変だ。
この12、3年で7度目の引っ越しとなるのだが、相変わらず、
だらだら準備、駆け込み始末を繰り返している。
特に今回は新婚生活スタートと転勤が重なったので、
いろんなモノを捨てたり、いろんなモノを買ったりの毎日。
家に軋みをもたらしているともいえる、本の始末に苦しみ、
前回引っ越しに続き、半分近くを処分、ようやく落ち着いた感がある。


しかし、家電買うのは楽しい。
新居も新築なので、いろいろ設備は凝った感じになってるが、家電は、また格別だ。
スチーム洗浄&乾燥の洗濯機とか、冷気のカーテンがある冷蔵庫とか、
目詰まりしない掃除機(もちろん、ダイソン)とか、スチームつきオーブンレンジとか…
確かにそれぞれ微妙に高いけど、どれもヘンな付加機能でなく、
本来機能をレベルアップするモノだから、と理屈をこねて買う。ただ好きなだけのクセに。


そんなこんなでワヤクチャの中、読んだのは東野圭吾の新作「さまよう刃
いや、ろくに中身見ないで買ってしまったので、思い切りヤな思いをしてしまった。
端的にいうと、娘がレイプされて、殺されたら、「あなた、どうする?」という作品。
こういう設定、大嫌いだ。読んでいるだけで、ヘビィだし、救いがないし、辛くて辛くて…
僕的には「あなた、どうする?」にも結論出てるしね。娘、いないけど。
ただただ、犯人見つけ出して、なぶり殺す。
そんなケダモノに対しては、少なくとも、ただ死ぬよりずっと辛い思いさせる。


そんなことしても、救われないのは分かってるし、
復讐終えたら、虚しいだろうな、と思うけど、できることはそれぐらいしかない。
少なくとも、同じような被害者を生まないだけ、社会貢献でもあるでしょ。
少なくとも、裁判制度に任せていたって、救われるのは犯人だけだ。
小説の中でも、娘を失った父が同じような思考をたどる。
「罪を裁く権利が自分にないことはわかっていた。
 それは裁判所の仕事なのだろう。では裁判所は犯罪者に制裁を加えてくれるのか。
 ……
 むしろ裁判所は犯罪者を救うのだ。罪を犯した人間に更生するチャンスを与え、
 その人間を憎む者たちの目の届かないところに隠してしまう。
 そんなものが刑だろうか。しかもその期間は驚くほど短い。
 一人の一生を奪ったからといって、その犯人の人生が奪われるわけではない」


ホント、おっしゃるとおりだと思う。
更生とか、よくいうけど、何でそんなチャンス与える謂われがあるんだろうか?
だって、被害者は笑うチャンスも、何かを楽しむチャンスも、
喜びを味わうチャンスも、すべて失うわけだし。
それは被害者の周囲の人間の人生だって破壊するわけだし。
人権って本来、相互の人権を尊重しあえる人間同士で発生するモノでしょ。
よく人権派の弁護士さんとかいるけど、その人たちにはただこう言いたい。
「自分の恋人や娘を、なぶりものにされて同じこといえるの?」と。
被害者の身に立って、という視点があまりにも欠けてるでしょ。


だから、「あなた、どうする?」の答え、
たとえ自分がどう裁かれることになっても、個人的には「自分で復讐」だけど、
社会制度として、仇討ちを考えると、まあ難しい面もあるのは承知してる。
たとえば、仇討ちの有資格者。
親兄弟、配偶者、子供、ぐらいはまあ当然としても、
たとえば恋人、親友だと、その証明とかも必要になってくる。
たとえば、その方法。
公然と復讐するにしても、間違いなく巻き添えとか、出てくる。
全員がそんなうまくやれるわけないし、二次被害や返り討ちが哀しすぎる。


じゃあ、やはり警察制度、司法制度に頼るしかないわけで、
そうなると、発想から変えて、重い刑罰を課していただくしかない。
ちなみに、市中引き回しとか、獄門打ち首の上、さらし首、とか、公開去勢とか、
まじめな気持ちでいいと思ってる。
まず、ケダモノの人権とか関係ないし、
そういうのビジュアルで示すことで、予備軍のケダモノも犯罪に二の足を踏む。
こういうケダモノは、本当の意味で反省とかしないし、たとえしてももう遅い。
だから、いいと思うんだけど、たぶんまあ、そんなことにはならないだろうな。
でも、たとえ死刑になっても「人道的に配慮した処刑」がなされるくらいだからね。
少なくとも、被害者は人道的配慮と正反対のことされて死ぬわけだから。
ちなみに、冤罪の問題とか持ち出すのは、議論として反則なんで却下です。


そんなこんなで、こういったことを思いながら読み進めるのは、なかなかヘビィ。
白夜行 (集英社文庫)」のような重さの中にも読み応え、とか、
秘密 (文春文庫)」「超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)」みたいな、ふむふむ感は味わえない。
まあ、カタルシスに関しては、
僕がどう感じたか、と書くとネタバレと同じだから、割愛する。
あくまで、題材の是非と、ラストの部分を差し引いての、
小説としての読み応えまあまあじゃないかと思う。
ま、あくまで東野圭吾レベルとしての評価だから、微妙だけど。


しかし、こうして本を読みつつ、ブログを書いたりしてると、本当にいい逃避になる。
目の前には未整理の品々がたくさんあったりして、また現実に立ち返る。
どうしよう、と目の前真っ暗になる前に、まずは眠る。
疲れてたら、何もできないから。
こういうの、問題の先送りと分かっているけど、やめられない。
ああ、人間の性(せい、じゃなく、さが、ね)ってやつは、本当にもう…