大泉りか「ファック・ミー・テンダー」
この作家さんも、初めて聞く名前。
このタイトル。いや、ファック・ミーっていわれても。ああ、優しく、ね。
表紙の女のコは、中指立ててるし…
よくわからないので、ちょっと検索してみた。サイト「フシダラな果実」はこちら
http://home.att.ne.jp/apple/rika/index.html
これでも、何だかよくわからないが、ここ↓のメンバーらしい。
「脱ぎアリレズありチンコアリ。エロユニット、ピンクローターズ」
いやすごいね、まったく… よけいよくわからない状態になった。
http://home.att.ne.jp/apple/rika/pink/index.html
主役は二人の女子大生。
ミキは「ウリもあり」の高級キャバクラ嬢。
リカはロリコン系のヌードモデル。
これまでの生活に違和感を感じていた二人は、
引き込まれるように夜の、そして裏の世界に入り込んで行く。
もともとが、けっこう刺激的なモチーフな上、ちょっと実録ものっぽい、どぎつい描写。
だからといって、おミズの世界に墜ちていく、とかいうネガティブな要素はない。
もちろん、そちらの世界だから、悪いオトコたちは、掃いて捨てるほどいる。
ただ単に若さを利用されるだけ、だったり、だまされて痛い目にあってみたり。
世間一般の杓子定規な基準でいえば、二人は墜ちていってる、墜ちまくっている。
でも、あまり落ち込んだりはしないし、〝墜ちていくわたし〟に自己陶酔するでもない。
体を売ろうが、裸を売ろうが、別に変わったことをしている本人たちには意識はない。
事実、特別変わっていることしているわけではないから、そう考える必要もないが、
当然、周囲は〝特別変わっていること〟をしているんだ、と意識させようとするから、
なかなか、平常心を保つのも、大変な作業なんではないかと思う。
ま、そこらへんに苦悩とかないのは、作者の思想も大いに影響してそうだ。
サイトとか見る限り、そういう悩みとは無関係そうだし、
そういう悩みを持つことすら、プライドにかかわる、みたいな雰囲気も感じる。
風俗嬢を主人公にした小説だと、菜摘ひかるの「依存姫」が印象的だった。
どうやっても満たされないわたし、を私小説風に描いていて、
ものすごく乾いた感じの哀しさや切なさは、
グッと胸に迫るものがある一方、一種のさわやかさも感じられて、不思議な小説だった。
- 作者: 菜摘ひかる
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こちらはその点、騙されても、痛い目にあってもたくましい二人の女のコが、
ある意味で共感を呼ぶし、ある意味で現実感を損なわせる。
日常の違和感に溺れそうになってたリカは、ヌードモデルの仕事を通じて、
〝人に受け入れられる実感〟を得て、立ち直っていく。
同僚のキャバクラ嬢に嵌められ、オトコたちに拉致られたミキも、
傷つけられ、立ち直っていく過程で、自分という人間の価値を再発見する。
ううん、常識的な物言いになっちゃうけど、ホントにそれでだいじょぶ?
という感じは、やはり否めない。もちろん、物語としては自然な流れに感じるんだけどね。
そんな感じで、風俗の世界を特殊なもの、ととらえてないので、
たまに出てくる常識的な物差しは、かえって不自然に感じられるのがけっこう興味深いかも。
就職先や、親バレの際の、リカの父親の反応なんか、陳腐そのものだ。
ここらへんの、常識への挑戦、という部分も意識されているんだろう。
そうそう、ちょっと思ったこと。
風俗の世界って、遅刻の罰金とか多いんだな、とけっこうふむふむ。
そういう型にはまったことがイヤで、その世界に足を踏み入れる人もいるのか、
と思ってたけど、やたらと厳しいし、ヘンなルールが多い。
社会不適格者の集団みたいな業界にいる僕なんか、
絶対に通用しなさそうだな、とあらためて実感。
つくづく、自分のつぶしのきかなさ、を思わぬトコで思い知らされてしまった。