渡部千春、『デザインの現場』編集部「これ、誰がデザインしたの?」

1905円、はちと微妙。美術出版社



先々週の書評で見つけた、デザインものの写真本。
歯ブラシ、乾電池から、ヤクルト、カップヌードル
そして百貨店の包装紙にプロ野球のユニフォーム、成田空港のピクトグラム
さまざまな暮らしのデザインの誕生秘話や、その変遷、バリエーションなどをまとめている。


書評子も指摘していたように、百貨店の包装紙には伊勢丹が入ってない。
小田急だの、西武、東武だの、京王だの、明らかに格下のデパートは入ってるのに…
何か、伊勢丹に恨みでもありましたか?
お洋服があんまりに高くて、手が出なかったとか…
あっ、それは僕でした。恨んではいないけどね。
しかし、最近はブランドもののお洋服とか買った時は、
間違っても百貨店オリジナルのでもらおうと思わないからなぁ。
別に特別な感慨もなくなってしまった感じだ。


成田のピクトグラムは、3分の1近くがようわからん、みたいなデザイン。
目的の多様化に、追いついていっていないのだろう。
というか、単純な絵柄でそんなに多様な表現は難しいのかも。
オーディオ・ヴィジュアルルームなんて、想像もつかない柄だし、
両替所と銀行、並べれば区別できるけど、単独だとちょっときつい。
ミーティング・ポイントなんかも、下手すると商談ルームみたいに見えるし。


で、本題、でもないんだけど、カールの変遷がなかなか興味深かった。
カールといえば、チーズとカレーが原点だ、と思っていた、僕の蒙を開いたよ、この本は。
別にたいしたことじゃないんだけどさ。
とりあえずけっこうびっくりしたんで、ちょっとオーバーに書いてみた。
何と、チーズといチキンスープなのだよ。昭和43年(1968)の発売時は。
44年(1969)からは、カレーとチーズ。46年(1971)からうすあじが加わる。
あれ、これデザインの話じゃないな。ただの味の話になってる。


そうそう、そのカールといえばカールおじさんだけど、
パッケージデザインに登場したのは、昭和63年(1988)だったりする。
昭和最後の年じゃん、なんて感慨深くもないけど、とりあえず驚いてみる。
「それにつけても♪」は古くても、
「はぁ、おらがぁの村でぇは♪」なんてのは意外と新しいんだな、なんて思ってみる。


そして再び味の話に戻ると、長らく数種類の味を守っていたカールの、
近年の暴走ぶりがけっこうおもしろい。
「うめがつお」だの、「のりバターしょうゆ」だの、「牛丼」「煮込みカレー」…
チョコ味のもあったのね。あんまりそれはカールじゃないと思うが。
そう考えると、地方限定のカールとか、もう何が何だかわからなくなってるから、
もう把握しきれないかもしれない。
こんど、地方限定菓子だけ、とか、地方限定フレーバーのカップラーメンだとか、
地方限定キティ携帯ストラップの本、誰か出してくれないかしら。
もしくは、定番お菓子のさまざまなフレーバーの変遷を集めた本とか。
あ、ファンタだけでもいいすよ。少なくとも、ぼくは買うからさ。


まあ、そんな感じでさまざまな思い出とかが頭をよぎり出すと、
この本、俄然と物足りなくなる。写真足らないし、あんまり網羅していない。
もともと、図鑑とも何とも書いていないし、
むしろ蘊蓄を語るのがメインの本ではあるだろうから、的違いな批判は承知の上だけど。


アメリカでよく出ているコレクターが編纂した「〜コレクティブル」みたいなの、
日本でもどんどん出ないかな、とひそかに期待は抱いている。
向こうだと、バービーだとか、ファーストフードのキッズミールだの、
いろいろなコレクティブル図鑑ものがたっくさん出てる。
コレクター王国、アメリカの奥深さを感じたりするのだけど、
いまや国際語となった〝オタク〟の国、ニッポンだって負けてられないでしょ。
誰か、ぜひ作ってください。待ってますぜ。