品川「DEAN & DELUCA」

これはちょっと昔の、ね。



ひさびさ寄ってみると、すこしレイアウトが変わってた。
高輪口から、港南口に向かって長い通路を渡り、アトレにたどり着く。
ガラスの自動ドアから、店舗をのぞくとパーッとお花が並んでた。
花屋さんの店先っぽい、立体的なレイアウト。
以前はこの場所、フルーツとかが目立ってたかな。
今より少し平面的な配置だったから、そこまで印象的ではなかった。
もちろん、目には鮮やか、心が浮き立つ。
そしてもちろん、DEAN & DELUCAだから、ふつうのお花屋さんより高そうだけど。
ま、ここまでは「おっ、いいね」という感じだった。


しかし、だ。入ってみると左のイートインコーナーが倍くらいの面積に広がっている。
以前はカウンターの10席程度だったのが、テーブルが入って20席以上に拡大。
それも、かなり狭っ苦しい感じに見える。
ここらへんで、むくむくと不安が沸き起こる。
周囲を見渡すと、デリのコーナーがこころもち縮小した感じ。
けっこうぜいたくなレイアウトだったパンのコーナーも、
大きな柱のとこに張り付くような並べ方に変わってる。
つまるところ、品ぞろえを犠牲にしたイートインコーナー拡充だ。
勝手に想像する。経営、あんまり芳しくないの?


確かに、ここってNYの超高級食材店だから、単価はムチャクチャ高い。
デリとか、セットはまあまあの値段で出してるけど、
単品で好きなのをピックするとあっという間に3000円ぐらいに到達する。
パンなんか、まだましな方(それでもすごいのがあるけど)
お菓子とかなんか値札間違えてるんじゃないか、と思うこともある。
とても、普段づかいできる人なんか、そうはいないだろう。
僕、もちろんたまにしか使えません。


容易に想像できるのは、
オープンからだいたい半年、物珍しさだけで買っていた購買層が減り、
売り上げが落ちてきたんじゃないだろか。
いくら品川のおしゃれOLさんたちだって(実際どのくらいいるのか知らないが)、
そんなにお金、保たないでしょ。
そういえば、丸の内店だって気付くと食材コーナーは微妙に縮小している。
天下の(!)丸の内OLだってそうなんだから、まあしょうがないのかな。


その分の売り上げ確保にイートイン拡充って思うのだけど、
品ぞろえを犠牲にするのはどうだろか。
確かに、いまでもDEAN & DELUCAの品ぞろえは魅力だし、
何がどのくらい減ったか、詳しく説明しろ! とかいわれると、
何となく減ったように見える、としかいえないのだけど、
バーッと店内を見渡した時の、〝心浮き立つ感〟は確実にダウンした。


DEAN & DELUCAに僕が期待するのは、行けば〝何かあるかも〟みたいな期待感だ。
ある意味、デパートにも共通するんだけど、
僕みたいなふつうの収入の人間にとっては、
たまに贅沢しにいく場所は、華やかであって欲しいのだ。
丸の内でも渋谷でも、並ぶ商品はひーっというくらい高い。
まあ、毎日ここでだけ食材買ってたら、あっという間に破産する。
希望の年収とか尋ねられたら、冗談めかして
「DEAN & DELUCAで毎日、〝好きに〟食材買えるくらいの収入」と言ってるくらい。


だけど、高くていいのだ。もちろん不当に高くして欲しいわけじゃないよ。
いいもの、ここでしか手に入らないもの、を買いに行くトコなのだから。
普段使いで買えるものだけを置いて欲しい、という人がいたら、毅然として
「それならほかのお店で、ご購入になれますよ」といって欲しいんだな。
プラス、そういう素敵なものがたくさん並んでる店であって欲しい。


もちろん、経営に責任持てるほど、買い物できないから、
そんなこと要求する権利はないんだけど、
品ぞろえ縮小&狭っ苦しいイートインのレイアウトを見てると不安に駆られる。
客単価下げて「みなさんに使って欲しい」みたいな感じが透けて見える。
それ、ちょっと聞こえはいいけど、単なるファミレス化、コンビニ化だ。


ファミレス、コンビニなどの普段使いのお店の価値は認めるけど、
どこも同じような店しかなくなったら、本当につまらない。
アメリカなんかの田舎はそうだけど、
どこに行っても同じようなレイアウトのモールに、
SEARS、Wal-MartGAPBanana Republic
特色なんか何もない。平均的なアメリカのローカル風景が広がる。


最近、渋谷とか新宿、銀座でまで、
郊外型の激安店(Dキホーテとか)やパチンコ屋が幅をきかせているのを見ると、
日本全体の〝田舎化〟を強く感じたりもする。
便利なのはわかるけど、そういうのは、もっと地元ですませて欲しいのに。


こうして、単にパンを買いに来ただけなのに、妄想を広げてしまった。
たぶん、考えすぎだと思うけど、せっかくのDEAN & DELUCAが、
明らかに場違いの人で埋まったりするのを想像すると、ゾッとするもんで。
ちなみに、客がパン買おうとしているのに、真横でくっちゃべってる店員さん♂も、
不快感度、高いよ。
どうせ「俺ったら、おしゃれなバイヤーだしさ」みたいに考えてるんだろうけど。
だって、明らかに客の目、意識してるもの。声高に商品名をそらんじたりして。


ああ、パンはおいしゅうございました。
さつまいもとライ麦のパンと、ゴマのアンパーニュ、よもぎのアンパーニュ。
ライ麦あんパンと、クロワッサンは会社の後輩におすそ分け。
ちなみに、ここで買う物はまだ、あんまりハズレない。
そのクオリティはまだ、間違いなし。
しかし、こんな状況が続くと、近い将来どうなるのか。
バーガーキング、プレタ・マンジュ、汐留ベヌーゴ…と、
僕のお気に入りはよく、消えていく運命にあるけど、ここも…なんて考えちゃう。