カタルシス不足の「母恋旅烏」

で、2冊目は荻原浩「母恋旅烏」母恋旅烏 (小学館文庫)
荻原浩と言えば、「オロロ畑でつかまえて」オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)「なかよし小鳩組」なかよし小鳩組 (集英社文庫)
ユーモア小説、という言い方は嫌いだが、「その系統」の名作に輝く2作が有名だ。


この「母恋旅烏」は、売れない「レンタル家族」を営む、元旅芸人一家の物語。
身勝手な父親、能ある鷹は爪を隠す派の母と、
「クリエーター」になりたい長男、シンガーになりたい子持ちの長女、
勉強とかは、ちょっと(というかだいぶ)苦手の「ぼく」、
の5人家族が織りなす、すれ違いと、すれ違いをコミカルに描く。
ちょっと「泣かせ」あり、家族の在り方を考えさせる描写あり、で豪華けんらんだ。
家族物語といえば、何といっても平安寿子の「グッドラックららばい」だ。グッドラックららばい
旅芸人の一座について突然家出してしまった母と、
けっこう身勝手気ままな家族たちを描いた、連作風のコメディドラマ。
旅芸人、ってトコで、「母恋〜」ともダブる。
破天荒な家族たちの気ままな生き様を描きながら、
家族ってなんなんだろうね、と問いかける。
そこには、決して古い慣習にとらわれない家族の形が、見えてくる。
目頭が熱くなり、読み終えると「ふ〜っ」と笑みがもれる。
そんな作品だ。


ただ、残念ながらこの「母恋〜」、「グッドラック〜」の水準までは達してなかった。
たぶん、だれ気味の前半が原因だと思うけど、後半のカタルシスがやや小さい。
「オロロ畑〜」「なかよし〜」の魅力までも、遠く届かなかった。
面白かったんだけど、あとちょっと…。
好きな作家だけに、やや欲求不満を残す読後感になってしまった。残念。