淡泊さがもの足りない「ぼくは悪党になりたい」

もう一冊は、笹生陽子「ぼくは悪党になりたい」。
ぼくは悪党になりたい
少し前から書店でよく平積みされている。
売れているらしい。アマゾン品切れになってる。
結婚をせずに2男を育てる恋に奔放な母、
父が異なる、元気いっぱいの弟ヒロト
イケメン系の女ったらしで友人の羊谷。
こんな勝手なやつらに囲まれ、振り回されるエイジの
「悪党になりたい」気持ちが描かれている。


とはいっても、エイジがそんな聖人君子なわけでもない。
意志が弱い、押しが弱いで、我慢を強いられ、ストレスをため込んでいるだけだ。
そんなエイジだから、ちょっとやさぐれると、
羊谷の元カノ、アヤに軽く誘われ、
好きでもないのに、ふらふらと初のアレをイタしてしまう。
まあ、これは平均的な17歳の男のコなら、誰でもそうだろうが(笑)
母の長期出張中、弟ヒロトが病気で寝込むと、母の元恋人を頼り、
間抜けな策略を張り巡らしたりする。


端的に言えば、非凡な環境にいる「平凡」な17歳の、
「平凡」に対する、ありふれた抵抗だ。
ただ、感情の動きに、「ああ、そういうこと考えたりするだろうな」という、
微妙なリアルさがあって、なかなか読ませる。もちろん、淡泊な感もある。
だが、女子高生アヤのエグさがうまい具合に物語にアクセントをつけている。
僕が評定するなら☆☆☆だが、読む人によってはツボにムチャクチャはまるかも。