好き、好き、好きが超たくさん

きょうは、長いんで2部構成で参る。何だよ、参るって。


で、舞城王太郎「好き好き大好き 超愛してる」だ。
好き好き大好き超愛してる。
何じゃ、このタイトル。
おまけにきんきらピンクのこの表紙、このオビ「愛は祈りだ。僕は祈る」。
前作「阿修羅ガール」は、気になりつつ手を出しそびれていた。
しかし、確信犯的なこの悪趣味に惹かれ、読み始めた。


ナゾの寄生動物ASMAに食い荒らされる智依子、
骨肉腫のため、若くして逝った柿緒、
夢の中で愛してしまった見知らぬ少女の妙子、
アダムに操られる戦士・イヴとして神との戦いに挑むニオモ。
彼女らへの「大好き」で「超愛してる」気持ちを、
思考をそのまま、書き出したような文体で、つらつらと綴る、不思議な小説だ。


自分が先に逝っても、100年間、誕生日に手紙を送り続ける柿緒、
癌にむしばまれ、死にゆく柿緒の横で、小説を書き続ける治。
神との戦いで、兵器として前線に赴くニオモとの絆に悩む石原君。
死が、二人の関係に大きく関わってくるストーリーは、
当たり前だが、かなり胸が苦しくなる。
でも、いわゆる〝泣かせ〟とは違う。(それはそれで好きだが)


死を前にしたそれぞれの状況で「好き好き」の思考が千々に乱れる。
この乱れというか、揺れるあたりの描写も、非常に読ませる。
ちょっと妄想入った感じの小説なので、
読みやすいか? と聞かれると微妙だが、
面白かったか? と聞かれると、文句なしで面白い! と言い切れる作品だ。


ちなみにもう中編がもう1編。「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」。


プラスドライバーを頭にぶっ刺されたオレ「加藤秀昭」。
しかし、気付くとオレは異世界で「村木誠」として、生きている。
頭の左上には、脳の奥にまで達した穴。
ガールフレンドは、ユニコーンの鞘木あかな。
ふたりのメイク・ラブは、あかなの角と、オレの穴。二人だけの特別な絆だ。
「世界を救う使命を背負う」オレは、さまざまな暴走を繰り返しながら、
異世界と、不思議な快感をつかさどる頭の穴の謎に迫っていく。


もう、妄想の世界そのものなんで、意味を考えるともうきりがないんだが、
不思議と引きつけるものを持った小説だった。
まあ、セクシャルな要素がふんだんに含まれるんで、妄想ポルノか?
しかし、そんなに興奮はしないな… つくづく不思議な小説だ。


ちなみにこの本、「ドリルホール〜」から紙と活字の書体が変わる。
奥付に書体と用紙まで書き記してあるんだから、こだわりなんだろう。
しかし、書体「ヒラギノ明朝StdW5」用紙「オペラクリームパルキー」
とか、いわれてもなぁ… 出版関係者じゃないし。