新宿バルト9で「スルース」
“男の嫉妬は世界を滅ぼす。”
ローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの
1972年作品、「探偵<スルース>」を、
マイケル・ケイン&ジュード・ロウでリメイク。
妻を寝取られた老推理作家ワイクと、
浮気相手の美容師マイロの策謀に満ちた心理戦を描く。
監督は、「魔笛」、「ヘンリー五世」のケネス・ブラナー。
「サイダーハウスルール」、「トゥモロー・ワールド」のケインは、
今回オリジナルでオリヴィエが演じたワイク役を演じる。
オリジナル版でケインが演じたマイロ役は、
「リプリー」、「コールド・マウンテン」のジュード・ロウ。
ケインがオスカー・ノミネートを受けた「アルフィー」も、リメイク作品でロウが演じているが、
そのあたりだいぶ意識してのキャストでもあるのだろう。
数々のベストセラーで知られるサスペンス作家アンドリュー・ワイク。
彼が暮らす瀟洒なカントリーハウスに、ある若い男が訪ねてくる。
売れない俳優のマイロ・ティンドルは、ワイクの妻マギーの愛人。
マギーとの離婚を迫るマイロに、ワイクはある提案を持ち出す。
共謀、それとも罠か―。息詰まる心理戦が始まる。
まさしく競演、というやつである。
ともに実力派の英国人俳優による、舞台劇の映画化をリメイク。
監督はハムレット作品で定評のある才人ケネス・ブラナー、
脚本は、ノーベル賞作家の「トライアル/審判」のハロルド・ピンターときたら、
予告だけでも期待値が高くなってしまうのはしかたがないだろう。
ただ、その割に前評判が高くなかったのは気になっていた。
そういえば、オスカーレースには引っかかりもしていない。
で、観て納得である。
確かに見応えはあるが、どこか空回りの感が否めない。
ところどころに張られた伏線などで、
気の利いた作りにしようとする意図は読めるのだが、
だからといって、それが有効に生かされているとはいえないのが残念だ。
もともと舞台劇なのに、芝居がかった、という指摘は不適当かもしれないが、
それでも、あまりにベタな芝居くささにあふれた脚本&演出もいただけない。
2大俳優の見せ場ばかりを意識し過ぎているのか、
どこかリアリティに欠けた感情表現が、気分を白けさせる。
ひとことでいえば「いまどき、そんな奴いるか?」的な部分である。
リメイクに当たって、現代向けに翻案したとのことだが、
やはりどこか古くささが感じられて、どうにも乗れないのだった。