那覇おもろまち・シネマQで「バンテージ・ポイント」
“目を凝らせ――。”
1発の凶弾、8つの視点。
大統領暗殺を異なる視点から繰り返し描くサスペンス。
主演は「インナースペース」、「オーロラの彼方に」のデニス・クエイド。
共演に「ラストキング・オブ・スコットランド」のオスカー俳優、フォレスト・ウィテカー、
TVシリーズ「LOST」のマシュー・フォックスに、
「エイリアン」シリーズのシガーニー・ウィーバー、
地元スペインからは「オープン・ユア・アイズ」のエドゥアルド・ノリエガ、
近年では「ヴィレッジ」が印象的な名優ウィリアム・ハートら、豪華布陣が並ぶ。
監督は劇場向け長編デビュー作のピート・トラヴィス。
スペイン・サラマンカのマヨール広場。
テロ撲滅会議の宣言を行おうとしていた米アシュトン大統領が狙撃された。
そして、たてつづけに起こった爆破事件―
大統領の傍らにいたシークレット・サービスのバーンズ、
市長の護衛のため、同席していた地元市警のエンリケ、
事件の一部始終をビデオに収めていた米国人環境客のハワード、
中継局のディレクター、そして大統領自身…
異なった視点から繰り返し再現される映像から、
事件のおそるべき真相が明らかになる―
なかなかに“焦らし”がうまい映画である。
ひとつの視点から事件が再現され、
謎解きの糸口が見えかけたところで強制巻き戻し。
また異なる視点からの再現でも、
事件が大きく動き出したと同時に再び巻き戻される。
そして繰り返しの再現の中で、次第に見えてくる事件の「真の姿」。
なるほど、観る者を絶妙に煽ってくれる作品なのだ。
もちろん、ふつうの文脈で描いてしまえば、
正直そこまで凝りに凝ったプロットではない。
繰り返し再生、という手口も、そう何度も使える手法でもないはずだ。
さらにいえば、ちょこちょこ細かい矛盾がないわけではない。
だが、そういうあら探しさえしなければ、素直に楽しめる佳作といえる。
デニス・クエイドにウィリアム・ハート、フォレスト・ウィテカーと、
ズラリ並んだベテラン達の演技も、新鮮味こそないが、やはりいい。
「インナースペース」のころから変わらないクエイドの熱い男ぶりに、
何だか心に響いてくる、ウィテカーの優しき視線、
スクリーン上にいるだけでも、映画に厚みを与えるハートの存在感。
これを楽しむだけでも、十分に観る価値のある作品だろう。