沖縄は那覇おもろまち・シネマQで「ジャンパー」

mike-cat2008-03-07



“行き先、無制限”
自由に瞬間移動できる“ジャンパー”を主人公にした、
ティーヴン・グールドの同名原作を、
「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs. スミス」ダグ・リーマン監督が映像化。
主演はスター・ウォーズのアナキンことヘイデン・クルイステンセン、
共演に「スネーク・フライト」「パルプ・フィクション」の名優、サミュエル・L・ジャクソン
「リトル・ダンサー」「父親たちの星条旗」ジェイミー・ベル


ミシガンの田舎町に住むデービッド・ライスのあだ名は「ライスボウル」。
同級生のミリーに想いを寄せる、ややひ弱な高校生。
ある日、級友の悪戯にはめられ、氷点下の川に転落したデービッドは、
次の瞬間、ずぶ濡れで学校の図書館で倒れていた。
不思議な能力に目覚めたデービッドは、これまでの人生を捨て、
瞬間移動で世界中をジャンプする、自由な生活に身を投じたのだが…


自由に瞬間移動ができたら、人は何をするのか―
透明人間になったら、もちろんあんなことやこんなこと、なのだろうが、
瞬間移動となると、やはり自由を満喫プラスおカネということになる。
主人公のデービッドは、銀行の金庫から好きにおカネを失敬しつつ、
世界の名所を自由に行き来する、まさしく好き放題な人生を送る。
程度の差はあれど、おおむね誰もがそんな生活を送るだろうと思う。


だが、その割にこのデービッドに共鳴できない。
理由を考えてみる。
特別に人を傷つけたりもしないし、必要以上に強欲なわけでもない。
それでもやはり、このデービッドが好きになれない。
突き詰めて考えると、やはりクリステンセンの演技なのだろう。
抑えた演技のつもりなのか、終始ヌボーッとしたクリステンセンの表情が、
デービッドの人間味という部分を、まるで殺してしまっているのだ。
だから、何となく映画の流れそのものに乗れない。


脚本は「フレディVSジェイソン」のデービッド・S・ゴイヤー、
「Mr.&Mrs. スミス」のサイモン・キンバーグに、
「ファイト・クラブ」のジム・ウールスによる共同脚本。
ストーリーの構成はなかなか凝っているし、
ローマ、ロンドン、NY、東京、カイロ…と、世界中を駆け回る映像も楽しい。
さすが、「ジェイソン・ボーン」シリーズのダグ・リーマンという感もある。


それなのに、容赦なくジャンパーを狩るパラディンの方に正義を感じるし、
ジェイミー・ベル演じるもう一人のジャンパー、グリフィンの方に共感を覚える。
思い出の同級生ミリーの怒りはもっともだと思うし、
結局はデービッドの能力のせいで翻弄される父もあわれでならない。
この映画の最大の魅力でもある、デービッドが手にした“自由”が、
クリステンセンの仏頂面のおかげで、えらく色褪せてしまうのだ。


クリステンセンという俳優が特別嫌いなわけではない。
おままごと、と酷評されたスター・ウォーズ3部作での演技も、
アナキンというキャラクターの浅はかさそのものだと思えば、気にもならなかった。
だが、この映画では、明らかにキャスティングの失敗だ。
もっと面白い作品にできたはずなのに、と思うと残念でならない。
グールドの原作小説には、グリフィンを主人公にしたスピンオフがあるようだが、
そちらでもう一度、もっと“自由”を味わえる作品を作って欲しいものだ。