沖縄は那覇おもろまち・シネマQで「ライラの冒険/黄金の羅針盤」

mike-cat2008-03-06



“その針は教えてくれる。”
フィリップ・プルマンのベストセラー・ファンタジー
ライラの冒険」シリーズの映画化第1弾。
ニコール・キッドマンに、「007」のダニエル・クレイグ
「ドリーマーズ」エヴァ・グリーンや、
「ゴーストライダー」「ハルク」サム・エリオットら豪華布陣で贈るファンタジー大作だ。
主人公ライラにはオーディションで選ばれた新鋭ダコタ・ブルー・リチャーズ。
監督・脚本は「アバウト・ア・ボーイ」クリス・ワイツ


物語最初の舞台は、パラレルワールドの英国・オックスフォード。
その世界で魂は、ダイモンと呼ばれる動物の形で人間に寄り添う。
すべてを支配しようと目論む<教権>、
そして自由への鍵<ダスト>…
世界は、大きな転換期を迎えようとしていた。
学寮に住むライラは12歳の勝ち気な少女。
叔父のアスリエル卿の新発見が、<教権>を揺るがす。
そんな折、謎の女コールター夫人が学寮に現れ、ライラを北の地に誘う。
学寮から手渡された真理を見通す“黄金の羅針盤”を手に、
旅に出たライラだったが、そこには驚くべき冒険が待ち構えていた…


雪豹や狼、うさぎに猿、猫…
魂、もしくは守護霊として人に寄り添うダイモン(発音だとデイモンに聞こえるが…)。
<教権>に支配された、どこか窮屈な世界。
言葉を話す白熊たちの王国に、異世界への扉となる<ダスト>の存在―
独特の世界観に、謎めいた魅力的なキャラクターたち。
原作は未読だが、なるほど世界中で愛されるファンタジーであることは、
こうやって箇条書きにしていくだけでも、よく伝わってくる。


そんな原作を膨らませ、スクリーンに映し出される映像も、
思わずワクワクしてしまうくらいの想像力と迫力にあふれている。
冒頭から目はくぎ付け、思わずため息が漏れることも多々ある。
特に気球での冒険や、北の地で繰り広げられる、白熊たちの戦いは圧巻。
まさしくファンタジーの王道といってもいいだろう。


とはいえ、原作を既読の人と比べ、
まったくのサラで映画を観た人間には、取っ付きにくさもある。
最初に行われるパラレルワールドの説明は、
スターウォーズのそれを越える唐突さだし、第一に端折りすぎ。
場面場面も多少短くまとめすぎている部分もあり、
どこかチャカチャカと進んでいく印象は正直ぬぐえない。
安直なストーリー、という指摘もあるだろう。
112分という尺を考えると、エピソードを1つ2つ削るか、
場面場面をもう少したっぷりと描いて150分くらいにしてもよかったと思う。


ただ、そんな瑕疵を問題にさせないほど、作品そのものにパワーはある。
その一端を担うのが、ダコタ・ブルー・リチャーズだろう。
はっきりいって、この少女を見つけたことで、この映画は“成功”である。
ある意味、ハリー・ポッターダニエル・ラドクリフを凌駕するといっていい。
演技や雰囲気は、非常に自然で、
「あたしの演技見て!見て!」的な、いわゆる子役臭はない。
さらにその瞳の力強さ。
いい意味での癇の強そうな感じが、ライラのキャラクターに深みを与える。
加えて、あの時期の少女独特の美しさも兼ね備える。
あの大女優ニコール・キッドマンと並んでも、
存在感で負けていないのだから、たいしたものである。


ロード・オブ・ザ・リング」を凌駕する作品は無理そうだが、
続編は間違いなく観てみたい、そんな作品。
可能なら、続編公開前に、もっと尺の長い完全版が観られたら文句なし。
ちょっとショボめのダニエル・クレイグも今後は活躍するのか。
いろいろとお楽しみは尽きないシリーズにもなりそうだ。