新宿テアトル・タイムズスクエアで「ペネロピ」
“好きになりたい。
豚の鼻を持って生まれてきた私は
夢見ていた──恋することを。”
「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」、
「キューティ・ブロンド」のリース・ウィザースプーン製作、
「モンスター」、「アダムス・ファミリー」の、
クリスティーナ・リッチ主演の話題作。
共演は「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」の、
タムナスさんことジェームズ・マカヴォイ、
監督はこれが長編デビュー作となるマーク・パランスキー。
豚の鼻を持って生まれた少女の運命を描くファンタジー・ラブコメディだ。
裕福な名家、ウィルハーン家には古くからの言い伝えがあった。
先祖にかけられた呪いが、ウィルハーン家の娘にかかる―
そして、5代ぶりに生まれた長女は、豚の鼻と耳を持って生まれてきた。
母ジェシカはその娘ペネロピを守るため、
彼女を死んだことにし、世間の目から守ろうと画策する。
18歳を迎えたペネロピの呪いを解くため、
真実の愛を見つけようと次々お見合いをさせるのだったが…
ありのままの自分を受け入れられるか―
ややもすれば、怠惰な人間の言い訳にもされそうな、
陳腐にもなりえるようなテーマでもある。
だが、そのテーマに真っすぐ正面から取り組んだこの作品は、
鼻白んでしまうような過剰なメッセージ性をうまく抑え、
ロマンチックでファンタジックなラブコメディに仕上げられている。
こうしたテーマで難しいのはバランスだろう。
ブタ鼻を受け入れるまでには、並大抵の努力では足りないし、
物語のラストでブタ鼻を治すとなれば、自己否定という矛盾も生じ得る。
かといって、ブタ鼻のままでよかったよかった、とするのも至難の業。
過程の切なさと、結果のハッピーさのさじ加減が問われるのだが、
プロデューサーや監督のセンスはなかなか悪くないようだ。
感涙、とまではいかないが、それなりに胸にグッとくる気がする。
ペネロピを見守る両親役を演じた、
リチャード・E・グラント、キャサリン・オハラも抜群にいい。
時に愚かなまでの親の愛、そして過ちを温かい視線で描く。
タムナスさん、じゃなくマカヴォイ演じるマックスが、
ペネロピに惹かれていくまでの過程も不自然じゃないのがいい。
多少の“出来過ぎ感”は否定しないが、
それでもいいお話、いい映画にしようという熱意は感じられる。
ペーソスとユーモアの味つけも好感が持てるし、まずまずの佳作。
観て損はない一本だといっていいだろう。