シネセゾン渋谷で「人のセックスを笑うな」

mike-cat2008-02-14



“恋におちる。世界がかわる。
 19歳のボクと39歳のユリのいかれた冬の物語。”
山崎ナオコーラ文藝賞受賞作「人のセックスを笑うな (河出文庫)」を、
「犬猫」の井口奈巳が映画化。
劇場には女性が長蛇の列、次々と拡大公開の話題作だ。
主演は「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」永作博美と、
「DEATH NOTE デスノート」でLを演じた松山ケンイチ
共演に「フラガール」蒼井優


 みるめは地元の美術学校に通う19歳。
ある日ふとしたきっかけで、新任講師のユリに出会い、惹かれる。
ユリのアトリエに誘われたみるめは、関係を持ってしまうことに。
みるめの同級生えんちゃんは、そんなみるめに想いを寄せていたが…


原作を読んだときに思ったのは、ゆるやかな時間の流れが心地よくも切ない小説だったこと。
この映画でも、その独特のリズムは生かされている。
で、パンフレットで藤野千夜が“ゆるくて、切ない”と書いているのを読んで、
思わず「そうそう」と感激まじりに同意してしまう。
そんな作品に、永作博美蒼井優が出ると聞いたら、それは見逃せない。
永作博美に振り回され、蒼井優に想われる。
妄想世界的には、ほぼ理想に近い(そりゃ、妄想に限界はないが…)設定だ。
ということで、期待値はかなり高いレベルで劇場に赴く。


ただ、映画そのものは、まあまあ、というところだろうか。
緩やかな時間の流れは、静物画のような映像世界で定評があるらしい、
井口奈巳の演出とまずまずマッチはしているのだろうと思うが、
あまりに抑揚がなさすぎるのは、ちょっと気になるところ。
137分もの長尺を使って、たっぷりと描くこと自体に不満はないが、
もう少し刈り込んで、動きのある部分でアクセントを入れたら、
映画としてもっともっといいまとまりが出たんじゃないかとは思う。
小説の文法と、映画の文法をごっちゃにしてしまってはならないのだ。
2人の大好きな女優が出ているから、僕はさほど退屈はしないが、
女優に対して特別な感情がなかったら、かなりきついものになりそう。


ストーリーの割に、永作博美の露出が少ないのも不満といえば不満。
スケベごころを満たせ、とはいわないが、
やはりここまで隠されるとかえって不自然に感じる。
それは、蒼井優に関しても、ちょっと感じてしまう。


まあ、全体的には悪くない、程度の映画。
もっともっと、面白くできたはずなのに、というのも正直なところだ。