新宿バルト9で「アメリカン・ギャングスター」

mike-cat2008-02-01



デンゼル・ワシントン×ラッセル・クロウ
1970年代のNY、NJを舞台に、
黒人ながらイタリアン・マフィアをしのぐ帝国を作りあげた伝説のギャングと、
汚職にまみれた警察で孤立しながらも、組織を追い詰める刑事の対決を、
2大オスカー俳優共演で描く、圧倒的な重量感の大作。
共演にキューバ・グッティング・Jr、ジョシュ・ブローリンら。
監督は「ブレードランナー」「グラディエーター」
名匠リドリー・スコット
全米で大ヒットを記録した実録もののギャング・サスペンスだ。


アメリカがベトナム戦争に疲弊していた1970年代。
ハーレムを仕切る黒人ギャングのボスの後を継いだフランク・ルーカスは、
独自のルートでヘロインを密輸し、組織を拡大。NYで台頭していった。
一方、ヘロインの密売ルートを追うのは、
清廉潔癖さゆえ、腐敗した警察組織で孤立する刑事リッチー・ロバーツ。
ギャング同士の激しい抗争、そして腐敗しきった警察との内部対立。
そんな中で、2人の人生が交錯していく…


とにかく見応えは十分である。
ワシントン、クロウともに重厚感あふれる演技で、
ギャングの世界、警察の世界をえげつなくもリアルに描き出す。
アクション・シーンの迫力も素晴らしいし、テンポも上々。
だが、それでもどこか物足りないのは、なぜだろうか。


理由を考えると、「まとまりのよさ」に行き着く。
まとまりのよさは、157分を一気に見せる娯楽性に表れているが、
その一方で、観終わって意外に印象度の薄さがどうも気になる。
たとえば、終盤のワシントン×クロウの激突っぽい部分。
映画のテンポを考えると、あれで正解かとは思うが、
バランスを犠牲にしても、もう少したっぷり描かれてももよかったかな、という感はある。
脚本は「シンドラーのリスト」でオスカーを獲得したスティーヴン・ザイリアン
持ち味のまとまりのよさが、作品全体のインパクトを逆に薄めてしまったのか。


映画のラストも、どこか不満が残ってしまう。
エンドクレジットの後のおまけ映像はともかく、
最後のギャングの姿に漂う哀愁は、どうにもそこまでの爽快感とぶれる。
あのデンゼル・ワシントンの表情は、正直複雑すぎる感はある。
それがリアリズムだ、といってしまえばそこまでだが、
こんなところでだけ統一感がなくなってしまうのは、どうにもいただけない。


ただ、こんな不満を覚えるのも、このスタッフ、このキャストだからこそ。
ふつうの映画として考えれば、合格点を軽くクリアしているのも確か。
よほどこの2大俳優が嫌いじゃない限りは、ぜひに観るべき作品だと思う。
いわゆるギャング映画にしては、そこまで残酷描写もないし、
けっこうお気軽にも楽しめるはずの、そんな佳作である。