渋谷Bunkamuraル・シネマで「やわらかい手」

mike-cat2008-01-10



“この穴から幸せが見える。”
「マリー・アントワネット」マリア・テレジアを演じた、
マリアンヌ・フェイスフル主演の英国産コメディ。
そこはかとないユーモアと、艶っぽさを兼ね備えた、
「フル・モンティ」「キンキーブーツ」の流れをくむハートフルなお話だ。


ロンドン郊外に暮らす何のキャリアも資格もない熟年女性マギーが、
難病の孫を救うため、さまよい歩いて見つけた仕事。
それは、ソーホーのストリップ劇場での、手の「奉仕」。
戸惑いつつ仕事を始めたマギーだが、
実はその手は、ロンドン一のゴッドハンドだった―


何といっても、話題はヨーロッパ映画賞も獲得したフェイスフルだろう。
60年代にはミック・ジャガーの恋人として注目され、
アラン・ドロンと共演した「あの胸にもういちど」では、
素肌にジャンプスーツのセクシー・ショットで、
あの峰不二子@「ルパン三世」のモデルとなった人物だ。
そのかつてのアイコンを、“穴”の向こうに配置するというこの趣向。
オバさんと知らず、列をなすオトコどもの姿がやけに笑える。


マギーの“才能”を見込んで、サービス係に採用する、
ストリップ劇場のオーナー、ミキを演じるミキ・マノイロビッチもいい。
「青い夢の女」「クリミナル・ラヴァーズ」の個性派が、
ヘタをすると設定だけに甘えがちな作品に、絶妙の味わいを加える。


話自体はベタだが、丁寧な作りもあって、まあ安心して観られる作品。
場所柄もあって案の定、観客は年齢高めの女性客多し。
そこはかとない妄想なんかも抱きつつ観ているのだろうか、
なんてちょっとこわいことも考えつつ、客席を見やる。悪趣味。
作品としてはまずまず悪くないが、
難をいえば、母親に頼りっぱなしのくせに、
ろくに感謝の言葉すら口にしようとしない息子夫婦が不愉快。
自分たちが甲斐性なしのくせに、母親を売春婦呼ばわりは、
たとえ映画とはいえ、許容範囲を越えているような気がする。