新宿武蔵野館で「再会の街で」

mike-cat2008-01-05



“話すことで、癒やされていく傷がある。”
9・11ですべての家族を失ったチャーリーと、
夫婦の間に立ちはだかる閉塞感に悩むアラン。
ふたりの「心を閉ざした男」が、NYの街で再会する―
パンチドランク・ラブ」のアダム・サンドラーと、
ホテル・ルワンダ」のドン・チードルによる、感動のドラマだ。


テーマは癒やし、である。
9・11のテロで家族はおろか、愛犬までをも失い、
心を閉ざしたチャーリーを、社会復帰させようと苦心するアラン。
そのアランも、家族や友人などの人間関係に、
自分でも気づかないほど深い苦悩を抱えている。
そんな2人が本当に癒やされるための、苦しい道のり。
悲しみを乗り越えるための時間、そしてそれぞれのやり方。
それをないがしろにしては、決して癒やし得ない傷がある。
押しつけがましい親切、思いやりに背を向け、
本当の意味での優しさや、癒やしについて考えさせられる。


アダム・サンドラーはおなじみといえばおなじみの役柄。
コメディ映画でのそれとはもちろん違うが、
繊細さとエキセントリックさが混ざり合う、
そのキャラクターはいつも通りのサンドラーといっていい。
好みの差は分かれるだろうとは思うが、
それでも、この作品のサンドラーは猛烈にいい。


名優ドン・チードルとの相性もいいのだろう。
アダム・サンドラーの演技と同様に、
ほのかなユーモアを交えつつも、しっかりとドラマを練り上げる。
共演のリヴ・タイラーも巨躯を揺らしつつ、魅力的なキャラクターを演じる。
物語の中に衝突や対立も描かれるのだが、
どこか温かさが感じられる、そんなストーリーでもある。


タイトルの由来となったThe Whoの名曲も含め、
懐かしさに満ちた選曲で流れるBGMもやたらにいい。
昨年中に観ていたら、たぶんベスト10のどこかに入れていたはず。
とりあえず見逃さなくてよかった、と、
胸をなで下ろしつつ、感動の涙に浸ったのだった。