なんばパークスシネマで「ブラザーサンタ」
〝ありえない家族のぶっ飛んだ再会劇!〟
サンタクロースと、そのぐうたらな兄を描く、
ちょっとオトナのコメディ・ファンタジーの秀作だ。
主演は「ドッジボール」、「ウエディング・クラッシャーズ」。
共演は「サイドウェイ」、「アメリカン・スプレンダー」のポール・ジアマッティに、
「ナイロビの蜂」のレイチェル・ワイズ、「クライング・ゲーム」のミランダ・リチャードソン、
「アメリカン・ビューティー」のケヴィン・スペイシー、「ミザリー」のキャシー・ベイツと、
実質本位、内容重視の豪華布陣をそろえた。
監督は「ウエディング・クラッシャーズ」のデヴィッド・ドプキン。
シカゴ在住のフレッド・クロースは、ひねくれ者でぐうたらなダメ人間。
幼い頃から両親の愛を独占した、完璧すぎる弟は、何とあの、サンタクロース。
金銭トラブルから、ちょっとした事件を起こしてしまったフレッドは、
保釈金をめぐって弟に泣きつくが、交換に北極に住む弟のもとを訪ねることに。
だが、北極のサンタクロースのオモチャ工場は、とんでもない苦境に陥っていた―
クリスマスを題材にした映画、というのは、
それだけでだいぶ評価的には甘くなってしまう面も否定できないのだが、
それでもクリスマス映画には名作・秀作・傑作が多いのは確か。
最近でも、酔いどれの極悪サンタを描いた「バッドサンタ」が、
そのバッドテイストでありながら、グッとくるような作品に仕上がっていた。
この「ブラザーサンタ」もその、シャレのきつさでは負けていない。
何しろサンタの上司は登場するわ、サンタが集団大乱闘するわ…
兄弟間の葛藤というテーマに関連しても、
あの大スターや元大統領たちの兄弟を引っ張り出すなど、
なかなか笑わせてくれる小技を次々と繰り出してくる。
それでいて、ドラマのツボはきっちりと抑えてきているのが心憎い。
兄弟のドラマ、そして子供時代の記憶…
前述の通りの、客寄せのためではない豪華キャストと、
涙腺を刺激するようなエピソードで、ストーリーを彩っていく。
中でもケヴィン・スペイシーがらみのエピソードは最高である。
始めから結末がわかりきっているストーリーにもかかわらず、
まったく退屈させることなく、笑わせ、泣かせ、楽しませる。
全米初登場は3位と、興行的には大成功とはいえないようだし、
日本での公開も、どうにも地味めの感は否めないが、
ことし公開の作品の中でも、屈指の必見作品といっていいだろう。