TOHOシネマズなんばで「ベオウルフ」
〝「300」と「ロード・オブ・ザ・リング」が
ひとつになった――壮大なファンタジーに、おびえろ〟
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス最新作。
主演は「ディパーテッド」のレイ・ウィンストン、
共演にアンジェリーナ・ジョリー、アンソニー・ホプキンスらを迎え、
最新CG技術を駆使して製作された、ファンタジー巨編だ。
舞台はいにしえの世のデンマーク。フロースガール王が治める地に、
呪われた巨人グレンデルが出没、人々を恐怖に陥れていた。
グレンデル退治にこの地を訪れた戦士ベオウルフは、
見事にグレンデルを倒すが、その母によって部下を皆殺しにされてしまう。
悪魔の退治に、洞窟へ攻め込んだベオウルフだったが、
それは、恐るべき呪いに彩られた歴史の、新たな始まりだった―
前作「ポーラー・エキスプレス」でも用いられた最新技術、
「パフォーマンス・キャプチャー」を駆使した映像世界、が売りの作品。
しかし、どうにもちゃちっぽく映るのは気のせいだろうか。
「300」や「シン・シティ」ほどの映像へのこだわりもなければ、
「ロード・オブ・ザ・リング」ほどの圧倒的な世界観もない。
PS3あたりのゲームとかと見紛うような、CGっぽさがどうにも痛い。
最新技術を謳ってはいるものの、
むしろ現在のCG技術の限界を強く印象づけられているようにも思える。
だいたいが、実際の俳優の演技をCGに取り組む、ということだが、
たとえばピクサーが製作しているような、
ある種アニメ的キャラクターによる映画作品ならともかく、
リアルな人物が活躍する作品で、わざわざCGに変換する意味がわからない。
怪物などのCG部とのギャップを埋めるためだとしたら、本末転倒だと思うし、
だいたいが、アンソニー・ホプキンスやジョン・マルコヴィッチの演技を、
CGに転換しようという考え方自体、どうかしているとしか思えない。
これを使えば、俳優のギャラを抑えられるとでもいうことだろうか。
今後この技術が主流にならないことを、祈って止まない。
ただ、そんな映像技術への不満の一方で、作品そのものは悪くない。
単なるマッチョ伝説ではない、戦士ベオウルフの弱さや、
さまざまな葛藤の描写はまずまず脚本にうまく書き込まれている印象だし、
皮肉な面が際立つストーリー展開も、観ていてなかなか味わい深い。
怪物の動きなんかも悪くないと思うし、
もう少し真っ当な作り方さえしていれば、もっと評価してもいい作品だと思う。