TOHOシネマズなんばで「ブレイブ・ワン」

mike-cat2007-10-31



〝許せますか、彼女の“選択”〟
「告発の行方」「羊たちの沈黙」
「フライトプラン」などで、論議を呼び起こしたジョディ・フォスターが、
復讐をテーマに、またも論議を呼ぶ作品を生み出した。
婚約者を奪われ、復讐の処刑人と化した女性を、
社会派的な視点から描くのは、「クライング・ゲーム」
「ことの終わり」ニール・ジョーダン
共演に「ハッスル&フロウ」「クラッシュ」テレンス・ハワード


幸せは突然、そして理不尽に奪われた―
NYでラジオのパーソナリティを務めるエリカは、
挙式を目前に控えた婚約者デイビッドとの散歩中、暴漢に襲われた。
エリカは一命を取り留めたが、デイヴィッドは残忍な暴力で帰らぬ人に。
後遺症で街の恐怖に怯えるエリカは、銃を持ち歩くようになったが、
ある日買い物に入った雑貨店で偶然、強盗に出くわしてしまう。
身を守るため、銃を放ったエリカは、その圧倒的な力に魅せられる。
いつしか、悪を裁く処刑人のような存在となっていくが…


許せますか、と訊かれたら、
許すも許さないも、とりあえずそんな権限はないということになるが、
もし、どちらかを選ぶなら、許す、だろうか。
復讐は新たな復讐の種を生み出すだけ、とはよくいう。
真理ではあろうと思う。
だが、理不尽に愛する者を奪われた人に対し、
そんな偉そうなことを振りかざす気には、とてもなれない。
ましてや、本来下されるべき社会正義は、どこにも存在しないとしたら…


処刑人、という題材は、アクション映画的には普遍的である。
愛する者を奪われた主人公が、ヒーローとして復讐する。
そんな作品なら、数限りなく作られてきたはずだ。
だが、この映画がそれらと一線を画すのは、
対テロ戦争を仕掛ける米国を投影しつつ、
リアルな題材として復讐や、正義の鉄槌について描いているところだ。


作品は、正義を信じるものとして、そうあって欲しい願望と、
復讐がもたらす一種の虚しさを、どこか曖昧に入り交じらせる。
「復讐の虚しさ」を唱えるニール・ジョーダンの狙いは、
そうした曖昧さの中に、復讐について考える余地を与えたい、というものらしい。
明確に「間違っている」とするジョディ・フォスターの演技は、
どこかエリカをエキセントリックに演じようとしている気もする。
受け取る側によって、七色に変わるそのメッセージは、何とも味わい深い。


もちろん、2度のオスカーに輝くジョディ・フォスターと、
実力派のテレンス・ハワードの演技のぶつかり合いは見どころ十分。
その2人の掛け合いだけでも、観る価値のある一本と言っていい。
ドラマの真髄をサスペンスフルに映し出す、ニール・ジョーダンの手腕や、
「ビッグ・フィッシュ」など、数々のティム・バートン作品を手がける、
撮影監督のフィリップ・ルースロによる映像も見事。
まさしく、必見の問題作といえそうだ。