なんばパークスシネマで「自虐の詩」

mike-cat2007-10-30



〝伝説の4コマ漫画映画化!
 笑いあり、涙ありの怒涛のエンターテインメント!〟
80年代の連載当時「泣ける4コマ」として名を馳せた、
豪田良家の名作「自虐の詩」がついに映画化。
ヤクザな男との不幸な関係にしがみつく幸江役に、
「電車男」「嫌われ松子の一生」中谷美紀
ちゃぶ台をひっくり返し続けるパンチパーマのイサオに、
「トリック」「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」阿部寛


通天閣を見上げる大阪は西成界隈。
元ヤクザのイサオと、その内縁の妻、幸江は、
その街の一角にある、古びたアパートで暮らしていた。
働きもせず、酒とパチンコに明け暮れるイサオは、
気に入らないとすぐにちゃぶ台をひっくり返す、乱暴な暴君。
しかし、そんなイサオに尽くすことで、幸江は小さな幸せに浸っていた。
周囲の心配をよそに変わり映えしない毎日を送っていた2人だが、
幸江の妊娠をきっかけに、大きな転機を迎えようとしていた―


超スローモーションで展開されるちゃぶ台ひっくり返しを軸に、
4コマ漫画のリズムで軽快に笑わせる前半と、
後半は泣かせのエピソードの上に、さらに泣かせをかぶせる後半。
ちょっと風合いが変わってしまう部分をどう評価するか微妙だが、
その転換を割り切って観てしまえば、かなり楽しめる映画である。


意外なぐらいパンチパーマのはまる阿部寛のヤクザっぷりもさることながら、
嫌われ松子〜」で不幸な女を演じきった中谷美紀の、
幸せを知らない切ない感じがたまらなく、こころに響いてくる。
原作と比べると、ブスッぷりが物足りない気もするが、
何だか虐めたくなるような、「不幸吸引力」のオーラはズンズン伝わってくる。


小中学生時代のエピソードの痛さも、こころに突き刺さる。
誰しもが持つ弱さ、それに対するやましさの描写はなかなかのもの。
海辺の寒村に対する、差別的とも言える描き方にはやや問題はあるが、
途中から涙が止まらなくなるような泣かせも、ベタでくどいが悪くない。


問題を挙げるとすれば、やはり過剰な「語り」だろうか。
必要以上に説明臭い場面描写に、蛇足としか思えないナレーション。
ここらへんをもう少しスッキリとさせていれば、
前半の4コマ漫画的なテンポとも、いいバランスになっただろうし、
TVドラマとは違う、映画ならではの魅力ももっと出せたはずだろう。