なんばパークスシネマで「自虐の詩」
〝伝説の4コマ漫画映画化!
笑いあり、涙ありの怒涛のエンターテインメント!〟
80年代の連載当時「泣ける4コマ」として名を馳せた、
豪田良家の名作「自虐の詩」がついに映画化。
ヤクザな男との不幸な関係にしがみつく幸江役に、
「電車男」、「嫌われ松子の一生」の中谷美紀。
ちゃぶ台をひっくり返し続けるパンチパーマのイサオに、
「トリック」、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」の阿部寛。
通天閣を見上げる大阪は西成界隈。
元ヤクザのイサオと、その内縁の妻、幸江は、
その街の一角にある、古びたアパートで暮らしていた。
働きもせず、酒とパチンコに明け暮れるイサオは、
気に入らないとすぐにちゃぶ台をひっくり返す、乱暴な暴君。
しかし、そんなイサオに尽くすことで、幸江は小さな幸せに浸っていた。
周囲の心配をよそに変わり映えしない毎日を送っていた2人だが、
幸江の妊娠をきっかけに、大きな転機を迎えようとしていた―
超スローモーションで展開されるちゃぶ台ひっくり返しを軸に、
4コマ漫画のリズムで軽快に笑わせる前半と、
後半は泣かせのエピソードの上に、さらに泣かせをかぶせる後半。
ちょっと風合いが変わってしまう部分をどう評価するか微妙だが、
その転換を割り切って観てしまえば、かなり楽しめる映画である。
意外なぐらいパンチパーマのはまる阿部寛のヤクザっぷりもさることながら、
「嫌われ松子〜」で不幸な女を演じきった中谷美紀の、
幸せを知らない切ない感じがたまらなく、こころに響いてくる。
原作と比べると、ブスッぷりが物足りない気もするが、
何だか虐めたくなるような、「不幸吸引力」のオーラはズンズン伝わってくる。
小中学生時代のエピソードの痛さも、こころに突き刺さる。
誰しもが持つ弱さ、それに対するやましさの描写はなかなかのもの。
海辺の寒村に対する、差別的とも言える描き方にはやや問題はあるが、
途中から涙が止まらなくなるような泣かせも、ベタでくどいが悪くない。
問題を挙げるとすれば、やはり過剰な「語り」だろうか。
必要以上に説明臭い場面描写に、蛇足としか思えないナレーション。
ここらへんをもう少しスッキリとさせていれば、
前半の4コマ漫画的なテンポとも、いいバランスになっただろうし、
TVドラマとは違う、映画ならではの魅力ももっと出せたはずだろう。