Bunkamuraル・シネマで「タロットカード殺人事件」

mike-cat2007-10-28



〝恋の行方も、犯人も、
 タロットカードだけが知っている…。〟
あのウディ・アレンが、「マッチポイント」に続き、
スカーレット・ヨハンソンをミューズに据え、ロンドンを舞台に描く、
意外に骨太なミステリーと、軽妙さが光るクライム・コメディ。
X−MEN」「プレステージ」のヒュー・ジャックマンも共演、
ウディ・アレンも事件に巻き込まれる二流魔術師役で登場する。


現場にタロットカードを残す、謎の連続殺人犯に怯えるロンドン。
NYから友人の家に休暇で訪れているジャーナリスト志望の学生サンドラは、
二流魔術師シドのマジックショーで、敏腕記者のストロンベルの霊と出くわす。
サンドラに伝えられたのは、何とタロットカード殺人事件の犯人という大スクープ。
さっそく、シドとともに、その犯人だという英国貴族のピーターに接近するが…


抜群の選曲センスに見事な映像、そしてベタなギャグ。
ウディ・アレン印のコメディは、意外とこのクドさがいい。
もちろん、ウディ一流のお洒落な笑いもたくさんあるのだが、
抜群のタイミングで繰り出してくる、スラップスティックな笑いは、
やはりこの監督の最大の持ち味なんだろうな、と
ようやくわかってきた気がする、今日この頃、なのである。


ちょっと不機嫌そうな小娘と、どうにも小物な老魔術師。
この絶妙なコンビが、優雅な貴族に近づく中で、とんだトラブルに巻き込まれる。
ウディ・アレンが出しゃばりすぎていないことで、
映画全体のバランスも、うまいこと調節が取れている気がする。
さらに、ミステリーとしての組み立てもなかなかどうして悪くない。
いい意味で安心感のあるストーリーの流れに身を委ね、
その世界に浸りきる気分は、ウディ・アレンの近作では屈指の一本といえそうだ。