TOHOシネマズ六本木ヒルズで「ゾンビーノ」

mike-cat2007-10-27



〝僕のはじめての友達はゾンビだった…〟
世界中の映画祭で話題沸騰、という
ハートフルなゾンビ映画、という驚きの設定が光る、
カナダ発の異色のブラック・コメディの登場だ。
監督は、新鋭のアンドリュー・カリー。
出演は「マトリックス「メメント」キャリー・アン・モスに、
「オー・ブラザー」のティム・ブレイク・ネルソン。


かつて、起こった「ゾンビ戦争」は人々の暮らしに大きな傷痕を残した。
宇宙から飛来した流星の放射線が、墓場の死体を甦らせたのだ。
次々と大量発生したゾンビとの凄絶な戦い―
そんな戦争に終結をもたらしたのは、ゾムコン社が開発した特殊な首輪。
人喰いゾンビを従順な召使いに変えてしまう首輪が、地球に平和をもたらした。
時は変わって、平和な時代を迎えた田舎町ウィラード。
いじめられっ子ティミーの家の隣に、ゾムコンの幹部が引っ越してきた。
ゾンビ嫌いの父の影響で、これまでゾンビを飼っていなかったロビンソン家だが、
世間体を気にした母ヘレンが、これをきっかけにゾンビを購入。
ファイドと名づけられたゾンビとの交流は、ティミーを活発な少年に変えていく。
だが、ある日、ふとしたきっかけで、ファイドが隣人を食べてしまった―


舞台は、1950年代を思わせる典型的な郊外の白人居住地域。
黒人も、ヒスパニックもいない、排他的な「古き良きアメリカ」である。
黒人層やヒスパニック層の進出に、忌避感と恐怖感を覚える白人層の恐怖を、
そのまんまゾンビに投影した、かつての時代への風刺をまじえつつ、
犬と出会った少年の成長を描く「マイ・ドッグ・スキップ」よろしく、
少年とゾンビの交流をほのぼのと描くという意欲的な趣向が光る。


そんなハートウォーミングと風刺の一方で、
ペットのゾンビが、隣のヤなおばさんを喰っちゃった! 的なお笑いもいい。
思わず、苦笑したり、ニヤリと笑ってしまったり、と、
悪趣味な楽しみ方もなかなかオツな作品だったりする。


ティミーを演じる子役のクサン・レイも、
可愛すぎず、憎たらしすぎずの絶妙な配役だし、
一時期の勢いがなくなったキャリー・アン・モスも、
不思議な包容力と、どこか危険な雰囲気を漂わせ、
作品に独特の深みというか、得体の知れなさを加えている。
小品ではあるが、強烈な印象を残す、気の利いた作品だ。