TOHOシネマズなんばで「グッド・シェパード」

mike-cat2007-10-25



〝いくつ愛を失くせば、この国を守れるのか〟
世界に名だたる米中央情報局、CIAの黎明期と、
その職務に引き裂かれたいくつもの愛を描く、壮大なドラマ。
名優ロバート・デ・ニーロが、「ブロンクス物語/愛につつまれた街」以来、
13年ぶりにメガホンを握ったことでも話題になった。
主演は最新作「ボーン・アルティメイタム」が公開間近な、
ジェイソン・ボーン・シリーズのマット・デイモン
CIA局員の夫に苦しめられる妻に、アンジェリーナ・ジョリー


物語の始まりは、二次大戦を目前にした米国。
イエール大学のエリート学生、エドワードは、
ふとしたきっかけから、諜報活動を行う機関に取り込まれていく。
思いがけない妊娠をきっかけに、友人の妹クローバーと結婚したエドワードだが、
戦略事務局(OSS)の任務でロンドンへと旅立ったエドワードは、
戦後も新たに設立されたCIAで諜報活動に従事。
時に非常な決断を迫られ、非合法な手段に手を染める組織で、
水を得た魚のように活躍を見せる一方で、家族との溝は深まっていった―


重大な使命と、家族のきずなの両立。
普遍的といえば、なるほど普遍的だが、ある意味永遠のテーマでもある。
単純には身の回りレベルから、こうした国家レベルの問題まで、
目的と手段が擦れ違い、いつしか目的すら見失っていく。
そうした矛盾の哀しさと切なさ、これこそが見どころである。


デ・ニーロ監督は、そこらへんのツボをキッチリ突いてくる一方、
夫も、妻も、どこか微妙に同情できない複雑な妙味を加えてくる。
マット・デイモン演じるエドワードが一番愛しているのが何か、
そこらへんが画面の端々から伝わってくるだけに、
虚しさと切なさのボルテージはどんどん上がっていってしまう。
単純明快な家族ドラマの感動はそこにはないのだが、
人間らしさがそこかしこにプンプンとにおってくるのも確かだ。


そうした複雑な余韻を残すストーリーに加え、重厚な映像作りや、
あまり過剰な説明をしない映画的な文法も、なかなか好感が持てる。
自らも重要な場面で登場するデ・ニーロならでは、のこだわりが、
随所に感じられる佳作といっていいのではなかろうか。