敷島シネポップで「キングダム/見えざる敵」
〝<9.11>──あの日以降、
今も続く見えない敵との終わらない戦い
最も危険な領域にFBIスペシャリストが潜入する〟
親米と嫌米が入り交じる中東サウジアラビアを舞台に、
米国人を狙ったテロの犯人をFBI捜査官が追う―
主演は「Ray/レイ」、「ドリームガールズ」のジェイミー・フォックス、
共演に「アダプテーション」、「遠い空の向こうに」のクリス・クーパーと、
「デアデビル」、「エレクトラ」のジェニファー・ガーナー。
製作は「マイアミ・バイス」、「インサイダー」
のマイケル・マン、
監督は、俳優としても活躍する「ベリー・バッド・ウエディング」のピーター・バーグ。
サウジアラビアで石油会社に務める米国人を狙った自爆テロが発生。
卑劣なテロでFBIの同僚を失ったフルーリー捜査官は、
現地での調査を願い出るが、政治的圧力の前に一度は道を塞がれた。
しかし、強引な手段で現地に飛んだフルーリーたちだが、
宗教、言語、そして政治体制… 大きな障壁が立ちはだかった。
あくまで製作とはいえ、マイケル・マン風味が強いサスペンス・アクション。
欧米とイスラム世界の対立が高まる中、
あえてテロの問題を取り上げた意欲作ではある。
FBIがサウジにまで出張って捜査する、という荒唐無稽さを、
いかにうまいことリアル路線に転化するかが注目だったが、
正直、違和感は取り除けないまま、ストーリーは展開する。
第一に、アクションがほとんど白兵戦レベルなのである。
捜査官やアナリストといった連中で行ったにもかかわらず、
軍用銃の使い方が巧いの何の、って、もうびっくりなレベル。
ジェイミー・フォックスにいたっては、
もうスティーヴン・セガールに匹敵する強さだったりする。
肌見せまくりの女性がウロウロする部分など、
相互理解を求めるテーマを掲げておきながら、矛盾する部分もあり、
「社会派」への意欲は、正直空回りであるといっていい。
やたらと後味の悪いラストも、ある意味リアルではあるが、
だったら、始めからこんな映画にしなければ、の感はある。
とはいえ、サウジアラビア人警官とフルーリーたちの交流を描く、
バディ・ムービー的な要素ではなかなか悪くないと思うし、
根本的な荒唐無稽さを考慮に入れなければ、
テンポもそう悪くない、迫力あふれるアクションの連続は魅力的。
映画ともっとも相性のいい風景のひとつでもある、
砂漠という舞台もうまく生かしており、退屈することはない。
惜しむらくは、後味悪いラストと、それまでの整合性だろうか。
統一感のなささえ何とかなれば、もっと高く評価できる作品のはずなのだ。