Regal Hacienda Crossings 20& IMAX at Dublinで「イースタン・プロミス」

mike-cat2007-10-04


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〝EVERY SIN LEAVES A MARK〟
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「クラッシュ」の鬼才、
デーヴィッド・クローネンバーグ最新作。
前作「ヒストリー〜」に続き、ヴィゴ・モーテンセン主演の今作は、
クローネンバーグ版「ゴッドファーザー」ともいえる重厚なスリラー。
共演には「21グラム」「キング・コング」ナオミ・ワッツ
脚本は「堕天使のパスポート」スティーヴン・ナイト


舞台はロンドン。
助産婦のアナ=ワッツが務める病院に、ロシア人少女が担ぎ込まれた。
赤ん坊と引き換えに若い命を失った少女の日記を手にしたアナは、
そこに記された住所を頼りに、市内のロシア・レストランを訪ねる。
だが、ロシア語で綴られたその日記には、恐ろしい事実が隠されていた。
レストランを訪ねるうちに、ロシアン・マフィアの跡取り、
キリル=ヴァンサン・カッセルの運転手を務めるニコライ=モーテンセンと遭遇したアナは、
いつしか惹かれ合いながらも、事件の真相に迫っていく―


不気味な静けさと狂気の暴力が入り交じり、不思議な格調を漂わす作品だ。
さすがR指定とあって、目を覆いたくなるようなシーンはかなりある。
喉を掻き切る凄惨なオープニングに始まり、
「げんまん」ではない方の指切りやら、
モーテンセンのサービスショット(?)満載の全裸ファイトなどなど…


あまりにリアルなその描写には、思わず苦笑すら浮かんでしまうのだが、
それはそれで、どこかこの映画全体の雰囲気とマッチしている。
スリラーとしての体裁もさることながら、哀しみをたたえた雰囲気が、
時折差しはさまれる、身の毛もよだつバイオレンスを際立たせる。


裏の世界の新興勢力といってもいい、ロシアン・マフィアの描写も秀逸だ。
あの名作「ゴッドファーザー」でコッポラが映し出した、
恐ろしくも生き生きとしたマフィアの姿を思わせるような、
リアルに感じられるロシアン・マフィアの世界がそこに展開する。
マフィアのボスを演じる、「シャイン」アーミン・ミューラー=スタールもいい。
マーロン・ブランド級とはいわないが、その貫録は賞賛に値するはずだ。


ヌードだけに終わらない、モーテンセンの魅力ももちろん満載だ。
カッセル演じるマフィアのバカ息子に振り回されながらも、
裏の世界でのしていこうとする男の哀愁を存分に振りまく。
ワッツ演じるアナとの、ほのかなロマンスもまた、渋さ抜群。
ヴィゴ様、さらなる新境地を切り開いた、といってもいいだろう。


全編にわたってロシア語とロシア語訛りの英語が飛びかい、
お聞き苦しい点は否めないのだが、それを越えて引き込まれる。
さすがクローネンバーグ、とひたすら感心の1作なのであった。