TOHOシネマズなんばで「ミス・ポター」
〝その恋が私を変え、私の絵が世界を変えた。
「ピーターラビット」の作者ビアトリクス・ポターの
恋と波乱に満ちた半生を描く感動作〟
世界111カ国で1億部のベストセラーを記録している、
不朽の名作ピーターラビット誕生を描く、
著者生誕140周年を記念して製作された伝記映画だ。
監督は「ベイブ」の第1作を手がけたクリス・ヌーナン。
イングランド北西部の湖水地方の美しい光景を映し出すのは、
「ゴスフォード・パーク」、「メラニーは行く!」の撮影監督、アンドリュー・ダン。
製作総指揮と主演を兼ねるのは、「コールドマウンテン」のオスカー女優、
「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズでもおなじみのレネー・ゼルウィガー。
共演に「ムーラン・ルージュ」や「トレインスポッティング」、「スター・ウォーズ」で若きオビ・ワンを演じたユアン・マクレガー、
「奇跡の海」、「レッド・ドラゴン」のエミリー・ワトソンという布陣。
ヴィクトリア朝の封建的な雰囲気も残る1902年。
良家の子女でありながら、結婚しないまま30歳を越えたビアトリクス・ポター。
夢見がちなビアトリクスは、夏を過ごした湖水地方での経験をもとに、
うさぎを主人公の童話を描き上げたが、なかなか出版先が決まらなかった。
ようやく見つけた出版先も、新人ノーマンを押しつけてくる始末。
だが、ビアトリクスの物語世界にほれ込んだノーマンは、
最大の理解者として、「ピーターラビット」をこの世に送り出した。
そんなノーマンにいつしか、階級の壁を越え、恋心を抱くビアトリクスだったが…
最初ポスターを見た時には、正直ちょっと引いてしまった。
38歳、レネー・ゼルウィガーのカマトト・スマイル…
「ザ・エージェント」の時にはキュンときたし、「ブリジット〜」ははまり役だと思うが、
どうにもこのビアトリクス・ポター役には不安がよぎった。
で、結果も予想通り。レネー風味全開の、ねっちょり演技が展開する。
おまけにエミリー・ワトソンまで登場するわけだから、
まあ、お嫌いな人には予告だけでも耐えられないはずではある。
しかし、なのである。
レネーを見ただけで虫酸が走る、というくらい嫌いな人でなければ、
そんなレネー・ゼルウィガーのどうこうが気にならないくらい、この映画はいい。
まずは何よりも、ピーターラビットのキャラクターが画面上で動く姿が、
もう信じられないくらい愛らしくって思わずにやけてしまうくらいなのである。
かといって、そのアニメの挿入が過剰じゃないのも好感が持てる。
あくまでドラマの演出の一環として、絶妙の使い方がなされている。
そして、ビアトリクス・ポターその人のドラマだろう。
上流階級に生まれ、良縁だけを追い求める、
お人形のような人生に背を向け、自らの夢を追求するビアトリクス。
ある事件をきっかけに、心の中の物語世界まで失いそうになる姿や、
その悲劇を乗り越え、見えてきた新しい夢への挑戦は、グンとこころに響く。
スクリーンに映し出される湖水地方の美しい光景が、
そのビアトリクス自身の手によっても守られてきた、という事実が、また感動的だ。
たいして期待もしなかったせいだろうか、けっこう高得点の佳作だ。
湖水地方の光景、ピーターラビット、ビアトリクスの半生のドラマから、
レネー・ゼルウィガーのねっちょりを減算すると、だいたい80点前後。
思わず、こんど絵本でも買いに行ってしまいそうな、そんな勢いなのである。