敷島シネポップで「キャプティビティ」
〝絶対に逃げられない。〟
「ソウ」、「ホステル」に続く、拷問系ホラーの最新作。
謎の一室に監禁されたNYのトップモデルが…
という、いかにもな設定が微妙な米=ロシア合作映画。
主演は、人気TVシリーズ「24 -TWENTY FOUR-」や、
「蝋人形の館」などでおなじみのエリシャ・カスバートだが、
監督が「キリング・フィールド」、「ミッション」のローランド・ジョフィ、
脚本が「フォーン・ブース」、「セルラー」(原案)のラリー・コーエン、
の豪華コンビでなければ、パスしていたかもしれない作品だ。
NY在住のトップモデル、ジェニファーはある日、
ソーホーのクラブで何者かに拉致され、密室に監禁された。
犯人の監視の下、脱出不可能な部屋でジェニファーが目にしたのは、
過去に監禁されたと見られる被害者への悲惨極まる拷問映像。
目的は一体何なのか― ジェニファー自身にも犯人の手が迫る…
優・良・可でいけば、ぎりぎり「可」の作品だろうか。
はっきり言って、さほど観るべきものがある映画とは思えない。
配給会社の自主規制で、暗転による修正を加えられた、
「話題」の残虐描写は、まあ、残虐度でいけばかなりのレベルではあるだろうが、
サスペンスを盛り上げるための舞台装置というより、
単に残虐描写のための残虐描写に終わってしまっているのがまず残念。
〝シャワー〟はともかくとしても、〝犬〟や〝シェイク〟に至っては、
その後のストーリーから考えても、明らかに逸脱しているといっていい。
〝犬〟に至っては、主人公への共感度が失われるだけの完全な失敗だ。
エリシャ・カスバートのファンだって(そういう趣味じゃない限り)、
好きな女優の監禁や虐待場面を観たいとは思わないだろうし、
ちょっとしたセクシー場面のサービス以外あまり楽しくないはずだ。
追いつめられた女性の心理描写なんかにも重きを置いているようにも見えるが、
脚本のワキの甘さが災いして、途中の展開があまりに見え透いているため、
その心理描写(のつもり)らしき部分も、さほどサスペンスフルにならない。
終盤に入ってのクライマックス場面でも、あまりにボロが多すぎて、
盛り上がるどころか、むしろ苦笑が浮かんでしまう始末だったりもする。
最後のオチも、ちょっとひねったつもりだろうけど、
このテの映画としては、逆にありふれていると指摘されても仕方がない。
珍しいくらい脚本の悪さが際立つ作品といっていいだろう。
ローランド・ジョフィ(ホントはジョッフェじゃないかと思うのだが…)も、
何をこうまかり間違って、こんな脚本に手を出してしまったのだろうか…
ムダな残虐描写を抑え、もう少ししっかりとドラマを書き込めば、
それはそれでもう少し観られた映画になったかもしれないが、
これではちょっとばかり「あんまりだ」感が強すぎる。
「悪魔のいけにえ」と、そのリメイク「テキサス・チェーンソー」の両作品を手がけた、
撮影監督のダニエル・パールによる映像も、これでは空回り。
駄作とまではいかないが、ちょっと失望感の残る作品だった。