TOHOシネマズなんばで「デス・プルーフ in グラインドハウス」

mike-cat2007-09-11



米公開版では、タランティーノ×ロドリゲスの、
2本立てとして上映された「グラインドハウス」から、
「ニューヨーク1997」カート・ラッセル主演、
クエンティン・タランティーノ監督の「デス・プルーフ」に、
米公開版では〝リール紛失〟としてカットされたシーンを追加、
いわば完全版として、米国外で公開されるバージョンだ。


テキサス州オースティン。
地元ラジオ局のDJジャングル・ジュリアは、
シャナ・バナナやバタフライらいつものメンバーで陽気に騒いでいた。
ジュリアが番組で仕掛けた悪戯でひとしきり盛り上がる中、
スタントマン・マイクを名乗る時代遅れな男が、バタフライに声をかけた―
14カ月後、テネシー州レバノン
映画の撮影中にできたオフを利用し、スタントウーマンのゾーイらは、
女優のリーを引き連れ、憧れのドッジ・チャレンジャーの試乗に臨んでいた。
ゾーイが目論んでいたのは、危険な「船のマスト乗り」。
だが、そんなゾーイたちを見つめる、危険な眼差しが…


完全版で観ても、やっぱり最高のバカ映画である。
天才バカボンのパパならば、こういうだろう。
「サイテーで最高なのだ!」
エロ、グロ、バイオレンスを盛り込みながら、徹底的にバカバカしさを追求し、
少年時代の憧憬でもあったエクスプロイテーション映画を現代に甦らせる。
少し焼け、粗い画像、キズだらけのフィルムに不可思議なカット割り、
突然の白黒転換に場面転換、そして不条理ともいえる唐突なストーリー…
本当に少年時代に観たとしたら、
ちょっとしたトラウマになりそうな驚きに満ちた作品である。


カート・ラッセルがこれまたやはり最高だ。
あの「スネーク」がまさかこんな役で、新たな境地(?)を切り拓くとは…
狂気と紙一重の、何とも言えないバカさ加減は、(前回も書いたが…)
まさしく昔テレ東とかでやってたB級、C級アクションの極み。
キル・ビル」のスタントウーマン、ゾーイ・ベルのスタントは、
今回結末までわかって観ていたのだが、それでも凄いのひと言。
夢に出てきそうな凄惨なクラッシュシーンも含め、やはりとてつもない作品だ。


撮影監督を務めたタランティーノの、趣味全開のシーンも、
あの衝撃の「おしっこもれそう」に、脚なめ回しショット、
そして、米公開版ではカットされたバタフライの「ラップダンス」まで、
そういう趣味がなくても、思わずムムムと身を乗り出しそうなスケベ感ばっちり。
あの艶めかしい唇と、微妙に体の線の緩いバタフライ=アーリーン役の、
ヴァネッサ・フェルリト(「CSI:ニューヨーク」)に思わず悩殺されてみたり、
無意味にチアガール役でチラチラと見せてくれる女優リー役の、
メアリー・エリザベス・ウィンステッド「ボビー」)にクラッときたりして、
こちらでもなかなか観るものを退屈させない魅力に満ちあふれている。


「グラインドハウス」で、「プラネット・テラー in グラインドハウス」と、
一気にまとめて観るのとはまた違う、楽しさあふれる113分。
タランティーノ史上でも屈指の傑作といってもいいだろう。
(もちろん、観るものによっていろいろと好みはあろうが…)
ラストの強烈なオチに笑いをかみ殺しながら、エンドクレジットを見守ったのだった。