梅田OS名画座で「ハリウッドランド」

mike-cat2007-07-19



〝1959年6月16日――
 世界で最も有名な“スーパーヒーロー”が、死んだ…。〟
TV版のスーパーマン役俳優の謎の死、
それはハリウッドの闇に迫る、裏の入り口だった―
全米に衝撃が走った実在の事件を題材にしたサスペンス。
事件の謎に迫る私立探偵ルイス・シモには、
「戦場のピアニスト」「キング・コング」エイドリアン・ブロディ
謎の死を遂げた俳優ジョージ・リーヴスには、
「アルマゲドン」「パール・ハーバー」ベン・アフレック
TVシリーズザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」や、
SEX and the City セックス・アンド・ザ・シティ」を手がけた、
監督兼プロデューサーのアレン・コールターが、初の劇場作品を手がける。


「スーパーマンが自殺!」
1959年6月16日、全米を衝撃のニュースが駆け抜けた。
俳優ジョージ・リーヴスは自宅の寝室で、銃弾に頭を撃ち抜かれていた。
捜査に当たったロサンゼルス市警は、事件を自殺と断定したが、
遺族から調査を依頼された私立探偵シモは、いくつかの不審な点に気づく。
スーパーヒーローを演じた彼の背景、隠された鬱屈、そして秘密…
事件を調べていくうちに、シモはハリウッドの暗部へとたどり着く。
それは、シモ自身を危険にも陥れていった。


非常にこう、評価のしにくい作品である。
間違いなく、素晴らしいのは、リーヴスが抱えていたスーパーマン役の苦悩、
そして、それを演じたベン・アフレックの演技だろう。
当時の恋人ジェニファー・ロペスとの共演ながら、
批評家を始めとする大ブーイングを受け、
ラジー賞を何部門も獲得した失敗作「ジーリ」から復活したアフレックは、
「スーパーマン」の成功がもたらした、「子どものヒーロー」のレッテルに苦しむ、
リーヴスの哀愁にまみれた人生を、フィルム・ノワール風に描き出す。
かえって滑稽にすら映るリーヴスの苦悩は、何とももの悲しく映る。


ブロディ演じる私立探偵シモも、なかなかに悪くない。
無頼派でありながら、ケチな仕事で糊口をしのぐ私立探偵。
ハリウッドの暗部に切り込むその姿には、ハードボイルドが匂い立つ。
次々とかかる圧力に、顔を傷だらけにしつつも、
徒手空拳で意地を張る姿は、欠点だらけの人物にもかかわらず、何ともグッとくる。


だが、そんな魅力的なキャラクターを抱えていながら、作品そのものはどこか退屈だ。
ところどころ中途半端に見どころを入れ、全体的な盛り上がりに欠ける。
まるで、CMをにらみながら物語のテンポを調節するTVそのもの。
脚本のポール・バーンバウムもTV出身ということで、
多少色メガネで見ている部分も否定はしないが、それでも、やっぱりTVドラマ的なのだ。


要素の詰め込みすぎも、作品の焦点をぶれる原因だろう。
リーヴスの哀愁のドラマとハリウッドの暗部、
語り部としてのシモのハードボイルド的なムード、
それだけで十分面白い映画になるはずなのに、
シモの家庭のドラマまで入れてしまうものだから、だいぶ話がおかしくなる。
ただでさえ、事件そのものの真相究明をぼやけさせているのに、
ドラマの軸がさらに増えることによって、作品が持っていたよさも印象が薄らぐ。


無理矢理にドラマが集約される終盤は、
盛り上がりよりもむしろ苦痛にすら感じる退屈さで、ひさびさ眠気に襲われる。
エンドクレジットで思うのは「あれ? 面白かったような気がするのに…」
主演のアフレック、ブロディだけでなく、
ボブ・ホスキンスダイアン・レインという脇にも恵まれた以上、
もう少しうまく脚本をまとめるなり、演出のポイントを絞るなり、したら、と思うと、
何だかもったいない気持ちがしてならない、微妙な作品なのだった。