札幌シネマフロンティアで「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」

mike-cat2007-07-14



〝これからお前は[すべて]を失う〟
前作「炎のゴブレット」から1年半、
シリーズ最高傑作と前評判も上々な最新作。
より大人になったハリーたちに、新たな苦難が襲いかかる。
熱烈なファンでもないくせに、ちょうど先行ロードショー公開なもんで、
わざわざ出張先の札幌にまできて、さっそく観てしまう。
そういえば、「アズカバンの囚人」も、出張先のこの劇場で観た記憶が…


それはともかく、アルフォンソ・キュアロンマイク・ニューウェルと、
作品ごとに受け継がれてきたメガホンを今回執るのはデヴィッド・イェーツ
長編映画は1998年製作の「The Tichborne Claimant」(日本未公開)ぐらいで、
あとは、「ある日、ダウニング街で」など、TV畑中心に活躍してきた〝新鋭〟である。(歳は40半ばだが)
しかし、第6作でも監督続投、とのことだから、大抜擢に応えた、という評価なのだろう。


前作で、友人セドリックを失うとともに、
宿敵ヴォルデモード卿の復活を見届けることになったハリーは、
闇の帝王復活をめぐる論議の矢面に立たされ、孤独に苛まれていた。
そんな折、ヴォルデモード復活を頑なに否定する魔法省は、
ホグワーツにヒステリックな女教師ドローレス・アンブリッジを送り込む。
ファンシーなピンクに身を包んだ管理主義の独裁者は、学校に混乱を巻き起こす。
一方、そんなドローレスに反発するロンやハーマイオニーらは、
ダンブルドア軍団を結成、闇の帝王襲撃に備え、訓練を始めた。
そして、不死鳥の騎士団も、決戦に向け、準備を進めていた―


毎度おなじみの超豪華キャストは、今回も健在だ。
アラン・リックマンマギー・スミスマイケル・ガンボンエマ・トンプソン
ゲイリー・オールドマンレイフ・ファインズワーウィック・デイヴィス
地味めの映画なら、この面子1人1人でいくらでも製作できそうな面々を、
一山いくらで、豪華に(ムダに?)使いたいように使うやり口は相変わらず。
今回からはヘレナ・ボナム・カーターなんかも加わって、ますますにぎやかだ。
とはいえ、この俳優たちも、息子や娘、孫たち相手に鼻高々!
みたいな部分もあるだろうから、まあそれはそれでいいんだろうけど…


作品を追うごとに、大人にはなっていくけど、
あの子ども時代の輝きを失っていくダニエル・ラドクリフは、だいぶきつい印象。
あと2、3作あるはずだが、保つのか心配だ、というのは前回も書いていたっけ…
ハーマイオニーことエマ・ワトソンちゃんも、
お年頃とあってか、今作ではやややせすぎの印象は否めない。
ともに、(こと、外見だけに関しては)旬を過ぎてしまったのだろうか。
ますますいい顔になってきたロン役のルパート・グリントや、
今回初登場のルーナ役を演じたイバナ・リンチが絶妙の存在感を示しただけに、
全体的なバランスをやや欠いてきたような部分は、すこし感じる。


今回、やはり異彩を放つのは、ヒステリー女教師のアンブリッジだろう。
演じるのは、「ピーターズ・フレンズ」「ヴェラ・ドレイク」イメルダ・スタウントン
全身ピンクだらけの衣装で、やることはヒステリックな管理、管理、管理…
魔法省の大臣の威光をかさに、次々と不条理な校則を定め、
処分と体罰のオンパレード、しまいには密告も推奨…、といかにもなキャラクター。
「こんな先生、いる、いる!」と思う観客も少なくないはずだ。


ヴォルデモードをめぐるハリーの孤独に、そんなアンブリッジの横暴にがからみ、
ハリーが追い込まれていくさまは、胸を締めつけられるような思いもよぎる。
そこからどうハリーが、そしてホグワーツの生徒たちが立ち上がるのか。
ある意味、ヴォルデモード以上に最悪の敵の登場で、
このシリーズの学園もの的なストーリーが、絶妙の魅力を放つのだ。


映画を通してのお話そのものは、まあいい感じにまとまっている。
ビッグ・ベンやロンドン・ブリッジを横目に空飛ぶホウキが飛行する場面に、
大物魔法使い同士による、迫力満点の対決シーン、
アンブリッジ先生をめぐる、魔法のギミックの数々…、と見どころは今回も満載。
シリーズ全体の起承転結で言えば、前作に続き、
転に近い作品ともいえる印象で、全体的なトーンは暗めである。
ただ、ハリー・ポッター版「帝国の逆襲」というわけではないが、
そのダークな味わいが、独特の緊張感と、ドラマ性をもたらせている。
前作で浮上した、ハリーと中国系ガールフレンドとの顛末が、
やや次作にお預けっぽい感じで投げ出されるのが、すこし切ないが、
まあ、そこらへんもシリーズものならでは、
のトータルな視点で考えなければいけないのだろう。


もうシリーズも5作目、まあ、ここまでシリーズを観続けている人には、
観るのをやめる理由も特別ないと思うし、
かといって、シリーズの1、2作ぐらいしか観ていない人でも、
十分楽しめるだけの魅力はあるはずだ。
大人の鑑賞にも耐えうる、という意味では、
この2、3作と同様の安定ぶりで、クオリティ的にも悪くない。
最高傑作、との前評判に関しては、肯定も否定もしない。
ただ、完結までの盛り上がりを味わうためにも、観ておいて損はない1本だろう。