梅田ガーデンシネマで「ブリッジ」

mike-cat2007-06-20



〝命をめぐる7つの実話〟
飛び降り自殺の瞬間をとらえた衝撃映像が、
多くの論議を呼んだ、話題のドキュメンタリー。
〝ゴールデンゲート・ブリッジ、世界最大の自殺の名所。
 この美しく巨大な橋でカメラが捉えた心揺さぶる真実の記録。〟
その瞬間と、ため息をつくような荘厳な橋の光景、
遺された者たち、自殺からの生還者らの証言で織りなす93分間。


「シャフト」「アンジェラの灰」の製作総指揮などを手がけたエリック・スティールが、
「ザ・ニューヨーカー」誌の記事から着想し、製作・監督。
1年間にわたってゴールデンゲート・ブリッジがかかる両岸にカメラを設置、
自殺者の実際の様子や、遺された家族や友人たちの証言を交え、
自殺について考察する、社会派のドキュメンタリー・フィルムである。


論議を呼んだ、自殺者を放置するのか? という疑問について、
エリック・スティールは、ひとつのガイドラインを挙げている。
「橋げたに足をかけた人を見かけたら、
 すぐに通報することをルールとして撮影した」
最大のウリが、その瞬間の映像、というセンセーショナリズムと、
どこか矛盾しているような部分は、否定できないし、
実際にどこまで有効だったかはわからないが、
映画の構成そのものと同様、スタンスとしては「自殺反対」の側にある。


多くの時間を割いて、強く訴えられるのは、遺された者の痛み、である。
自殺が、いかにエゴイスティックな行為であるのか、
喪失感や罪悪感、答えのでない疑問に取り憑かれた、
遺族や友人たちの証言は、意外性こそないが、そのメッセージ性は強い。
何が何でも「自殺反対」というのも傲慢かとは思うが、
その行為が及ぼす影響について、
もう一度考え直させることには、大きな意味があるだろう。


だからこそ、実際の自殺から生還した青年が、
柵を乗りこえたはいいが、手が離れた瞬間に「怖くなった」という話や、
死んだ息子にとっては、それがよかったのかもしれない、
と穏やかに淡々と語る両親の姿は、逆に強く印象に残る。
カトリックでは(確か)罪悪である自殺を、
何が何でもタブーとするような、思考停止を呼び掛ける作品でないことがよくわかる。


ただ、そうした家族や友人の証言が延々と続くのは、正直きついのも確か。
「自殺するような人じゃなかった」「何とか止められなかったのか」
をつらつらと聞かされると、正直飽きるし、げんなりもしてしまう。
劇場内のあちこちからイビキも聞こえたが、まあ無理もないと思う。
ブリッジの何が、自殺者を引き寄せるのか? であったり、
自殺絡みのデータ分析など、踏み込んだ考察がないのも、やや物足りない。
このへん、自殺映像ありき、の批判を受けてもしかたのないところだろう。


だが、ひとつ言えるのは、
ブリッジの美しい映像だけでも見る価値あり、ということ。
霧の中から登場するオープニングから、
時に陽光に輝き、虹に彩られ、時に闇夜に浮かび上がるブリッジの姿は、やはり格別だ。
この部分だけ取り出して、20分ぐらいのダイジェスト版があったら、
なんて思ってしまうような、特別な魅力にあふれている。
まだ一度もサンフランシスコ(ベイエリア)を訪れたことのない人はもちろん、
何度か訪れたことがある人でも、また訪れてみたくなるような映像である。
(自殺の名所、といってるそばから不謹慎だが…)
まあ、前述の通り、映画そのものは、まあ眠気にご用心、なのだが…