星新一「おせっかいな神々 (新潮文庫)」

mike-cat2007-06-08



〝ふとした偶然から巻き起こされる
 数々の事件を斬新・奇抜なアイデアで描き、
 異次元の笑いの世界に誘うショート・ショート40編〟
星新一 一〇〇一話をつくった人」を読んでいる最中に、
いてもたってもいられなくなり、ターミナルの駅の本屋で購入。
何で「ボッコちゃん (新潮文庫)」じゃないかというと、売ってなかったから…


お金持ちにしてくれる笑い顔の神様や、
商売の神が宿る不思議なブロンズ像、
近頃すっかり働きがいがなくなった、とぼやく幸運の神様など、
ちょっとズレた神々の物語を中心にした、40の物語。
単行本の刊行が昭和40年、ということだから、
(平成18年末で63刷、だそうだ)
中期の作品ぐらいに当たるのだろうか、いい意味で手慣れた印象が際立つ。


以前読んだのが、〝だいたい〟20年前なので、話はまったく覚えていない。
というか、3日前に読んだミステリの結末を忘れるような人間なので、
20年前だろうが、30年前だろうが、まったく関係はないのだが…
しかし、オチを覚えていない、というのは、なかなか悪くない。
ある意味、古典ともいえるような、?空想科学落語?は、
一遍一遍、心地よく読む者の気持ちをつかんでいく。


やはりすごいな、と思うのは、そのドライな語り口だろうか。
最相葉月の本では、ハードボイルドな、という類の表現を使っていたと思うが、
まるで海外ミステリを読んでいるような、そんな印象だ。
時事性、風俗性を排した物語はいまもほとんど色褪せていないし、
それも、表現そのものにはまったくといっていいほど、古さを感じさせない。
(もちろん、手直しはしているとのことだったが…)
いまから40年も50年も前に、すでにそうした感覚で書いていた、
ということに、あらためて驚きを感じてみたりもする。


物語の寓意や、思わずニヤリとするオチは、どこか残酷さも感じる。
これも「一〇〇一話をつくった人」の受け売りになってしまうが、
星新一の人生観、人間観というのが、反映されているのだろう。
オトしぶりには、よくも悪くも、星新一の人の悪さ、というのがにじみ出ている。
(ちなみに、人が悪い、という表現は、個人的には褒め言葉である)


この作品集が、膨大な星新一の著作でどういった位置にあるのか、
わからない状態でこんなことを言ってしまうのもどうかと思うが、
しかし、やっぱり、星新一ってすごいな、と思わせる1冊である。
こんどはもう少し大きな書店で「ボッコちゃん」買って帰らねばならない。
「一〇〇一話をつくった人」にも登場した、
初期の傑作を始めとする50編をぜひ読みたい、いや読まねばならないのだ。


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おせっかいな神々
星 新一著
新潮社 (2002.11)
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