なんばパークスシネマで「リーピング」

mike-cat2007-05-19



〝イナゴ少女、現る。〟
イナゴの大群が飛び回るTVスポットが強烈な、アレである。
「ボーイズ・ドント・クライ」「ミリオンダラー・ベイビー」で、
2度のオスカーに輝くヒラリー・スワンクと、イナゴの大群…
とんでもない組み合わせのホラーを製作したのは、
ジョエル・シルヴァー×ロバート・ゼメキスのダーク・キャッスル。
監督は「ゴースト&ダークネス」「ロスト・イン・スペース」のスティーヴン・ホスキンス。
脚本は「蝋人形の館」を手がけたふたごのヘイズ兄弟。


悲惨な事件で理不尽に夫と娘を奪われ、信仰を失った元牧師のキャサリンは、
ルイジアナ州立大で教鞭を取るかたわら、
世界中の宗教的奇跡のカラクリを暴き、神の不在を訴える活動を続けていた。
そんなキャサリンのもとに、ある依頼が舞い込む。
信心と迷信にとらわれた田舎町ヘイヴンで、川が血に染まる事件が起こった。
疑惑の目が向けられた、12歳の少女を救って欲しいとの頼みだった。
さっそくヘイヴンを訪れたキャサリンを出迎えたのは、
旧約聖書出エジプト記をなぞるような、10の災いだった―


驚いた。
イナゴ少女のスポットで、単なるバカ映画だと思っていたのだ。
もちろん、あのダーク・キャッスル製作のホラーだから、
いかにもなB級の香りはプンプンと漂うし、味わいも基本はB級テイスト。
しかし、そのクオリティはなかなかバカにできないレベルに達している。
傑作とまで言い切るにはややきついが、傑作寸前、ぐらいは言ってもいい。


「血の川」や「陸に上がったカエル」「群がるハエ」などなど、
出エジプト記の10の災いをモチーフにした、ホラー要素と、
信仰を失ったキャサリンのドラマをうまく絡ませ、
南部ルイジアナの田舎町を舞台に、おどろおどろしい恐怖の物語を紡ぎ上げる。
さすがオスカー女優、のスワンクの演技を核に、
「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」のデービッド・モリッシー
「クライング・ゲーム」スティーヴン・レイら実力派の俳優たちが、
ともすればバカバカしくなりかねない壮大な物語をギュッと引き締める。
そして、イナゴ少女を演じるのは、「チャーリーとチョコレート工場」で、
ガムを始終クチャクチャやってる少女を演じた、アンナソフィア・ロブ
少女が垣間見せる、不安と怒り、戸惑いが入り交じった複雑な感情を、
表情だけで見せ切る、というまさに天才少女の名に恥じない演技を見せている。


終盤のひねりは、ホラー映画の文法からするとある意味定番ではあるが、
俳優陣の演技が、そうした定番さ加減をうまいこと、上質の〝お約束〟に変える。
論理的整合性という意味でもまあ、落ち着いて考えると微妙におかしいのだが、
そこらへんも、テンポのいい展開と、パワーあふれる演出のおかげで、さほど気にならない。
タイトルの〝Reaping〟(収穫する、報いを受ける)の意味も含め、
観終わって、「うまいことやってくれたな…」と感心すること請け合いだ。
TVスポットのイナゴにつられて観に行くと、意外なまともさに驚きも感じるはずだが、
それもいい方で期待を外してくれた、と思えば、それもよし、じゃないだろうか。