シネマート心斎橋で「リンガー! 替え玉★選手権」

mike-cat2007-05-07



〝ハリウッドのモラルを覆す
 ブッ飛び金メダルムービー!〟
「メリーに首ったけ」ファレリー兄弟製作、
「ナッティ・プロフェッサー」の脚本を手がけた、バリー・W・ブラウスタイン監督、
「ジャッカス」ジョニー・ノックスヴィル主演。
知的発達障害者の五輪、スペシャル・オリンピックを舞台に、
ふだん描かれることの少ない、障害者の世界をコメディに仕立てあげた、
異色のハートフル・スポーツ・コメディがついに日本上陸。


仕事に不満を抱き、上司に訴えたスティーヴが与えられた仕事は、移民の清掃員の首切り。
人のいいスタビーを気の毒に思い、自ら面倒を見ることになったスティーヴだが、
まさかの事故でスタビーは指切断の危機に追い込まれることになってしまった。
スタビーの指を救うため、急きょ大金が必要になったスティーヴは、
スポーツ賭博好きの叔父にそそのかされ、
障害者のふりをしてスペシャル・オリンピックに出場することになった―


出世作の「メリーに首ったけ」を始め、「ジム・キャリーはMr.ダマー」や、
初期の傑作「キングピン/ストライクへの道」「ふたりにクギづけ」で、
再三にわたって、障害者をネタにしたギャグを披露してきたファレリー兄弟だけに、
今回もそのまんま知的発達障害を抱える人たちをネタに、きわどいギャグを放ってくる。
しかし、これまでの作品同様、障害者をネタにしても、決して嘲笑はしないのがこの作品の特長。
目上からの温かい視点や、差別的な視点を排し、
あくまで同じ視点から障害者を見るのが、ファレリー兄弟の作品らしさでもあるし、主張でもある。


だから、障害者のふりをしてスペシャル・オリンピックでひと儲け、
なんていう言語道断の設定でありながら、
物事の本質は外さない、正統派のストーリーが可能になる。
むしろ、周囲の理解不足などに苦しむ障害者の現状を、
押しつけがましくなることなく、ストーリーに織り込み、ありのままの姿を描く。
それは、不当に差別されることなく、それでいて過剰に美化されることのない姿。
生き生きとした様子が、スクリーンを通じて伝わってくるのだ。


だからといって、お涙ちょうだいの物語ではない。
基本的なストーリー展開は確かにベタではあるが、
罪悪感に苦しむ、ノックスヴィル=スティーヴの葛藤はなかなかうまく描けてるし、
ティーヴが恋するリン=キャサリン・ハイグル「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」)とのロマンスもなかなか。
ハイグルの魅力もうまく引き出されていて、思わずグッとくるドラマに仕立て上げられている。


製作者と主演の顔ぶれを見る限りでは、単なるバカ映画にしか思えないが、
実際観てみると、想像以上にまともな映画だし、いい作品だったことに驚く。
95分のテンポもいいし、きわどいギャグでも不快感はほとんどない。
いってみれば、思わぬ拾い物、という感じだろうか。
DVDで十分といえばそこまでだが、観て損はない1本だと思う。