梅田OS名画座で「戦場にかける橋」

mike-cat2007-04-18



アカデミー賞の作品、監督、主演男優(アレック・ギネス)など、
7部門を獲得した、映画史上に燦然と輝く名作映画が、
OS名画座リバイバル〝大作特集〟で、スクリーンに復活。
ちなみに73年の公開コピーだが、
〝全世界の賞を独占・映画史上最大の栄誉に輝く傑作!
 人間の名誉と誇りを賭けた 壮烈な男の戦い!
 今ひびくクワイ河マーチにのって 大画面に甦える!〟
これまでビデオやDVDで観る機会がなかったが、
スクリーンでこの名作を初体験できる、という僥倖に恵まれたわけだ。


舞台は第二次大戦末期、タイ・ビルマ国境の日本軍捕虜収容所。
日本軍は英米人捕虜を使い、重要拠点となるクワイ河に橋を架ける計画を立てていた。
ジュネーヴ協定違反の労働を強いる斎藤大佐(早川雪洲)に対し、
英軍捕虜のココルソン大佐=アレック・ギネスは協定を盾に、頑として抵抗。
遅々として進まぬ工事に業を煮やした斎藤大佐は、
ニコルソン大佐に半ば屈服する形で、作業協力を申し出る。
日本軍への協力という、矛盾を抱えながら、
ニコルソンらは英国軍人の矜持を懸け、精力的に架橋工事に臨んでいく。
一方、英軍は収容所を脱出した米軍のシアーズ中佐を駆り出し、
完成間近の橋を爆破する計画を立てていた―


基本的なテーマには、戦争の抱える虚しさや矛盾がある。
そして、虜囚として生きる中にも、譲れない英国軍人としての尊厳。
重厚なテーマを、いかにも大作らしく、重厚に、たっぷりと時間をかけて描いていく。
現代の映画文法においては、なかなかできない、時代性をも感じさせる大作だ。
時に間延びしているようにも感じる、雄大なリズムは、一種の贅沢さでもあるだろう。
同じく巨匠デヴィッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」同様、
そこに映し出される美しく、荘厳な光景、そして壮大な物語世界だけでも、
もう目を見張るような、圧倒的なスケールに満ちている。


もちろん、人間ドラマも見どころはたっぷりだ。
銃口を目の前にしても、瞬きひとつせずに、自らの尊厳を貫くニコルソン大佐。
非道な労働を強いる一方、武士道精神を語る斎藤大佐の、矛盾に満ちた人間性
そうした日英の軍人像が激突する中で、ドラマに密接に絡んでくるのが、
快楽主義というか、実存主義を貫くアメリカ人、という構図もなかなか面白い。
個人的には、ウィリアム・ホールデン演じるシアーズ中佐(少佐)が、
もっとも魅力的に感じてしまうのだが、まあ本筋としてはやはりニコルソン、ということだろう。
英国軍人の誇るべきプライドと、尊い騎士道精神に、
日本軍人が屈服していく様は、多少欧米優越主義にも映るが、
まあ実際、史実とされる部分をなぞっていくと、そうせざるを得ないのは理解できる。


そうした人間ドラマを描きながら、物語は皮肉な結末で幕を閉じる。
軍医クリプトンが連呼する〝madness!(狂気の沙汰だ)〟があまりに切ない。
多くの人間による、それぞれの尊厳をかけた行動が無に帰る。
まさに戦争という行為の愚かさを、徹底的に皮肉った展開ともいえるだろう。


前述の通り、現代の映画を見慣れてしまうと、やや戸惑いを感じる面も否めないが、
やはり映画史上に残る名作、との定評に間違いはないな、と再認識する。
圧倒的な感動、というわけにはいかなかったが、やはりこころに残る名作。
あの「クワイ河マーチ」が耳についてしばらく離れそうにない。
ウィキペディアを見たら、子供の頃
♪猿、ゴリラ、チンパンジーと歌っていたあの歌に、
違うバージョンの歌詞もあることを知り、これまた感慨ひとしお。
なかなかできない貴重な体験に、またも胸躍るのだった。