テアトル梅田で「13/ザメッティ」

mike-cat2007-04-12



〝13人のロシアン・ルーレット
 ──それは、運命を狂わせる邪悪なゲーム。〟
ヴェネチア映画祭サンダンス映画祭で評判を呼んだ、
グルジア出身監督による、新感覚のクライム・サスペンス。
〝TZAMETI 〟は、グルジア語で「13」を表す。
カンヌなどへの出品歴もあるテムル・バブルアニ監督の長男、
ゲラ・バブルアニが仕掛けた、モノクロームの悪夢は、
ブラッド・ピットらハリウッドのスターたちをも夢中にさせ、
バブルアニ自身の手によって、ハリウッド・リメイクも決まっているとか。


フランスの沿岸地方で職人を営む22歳のグルジア系青年セバスチャン。
ある日、仕事先で聞きつけた、危険な金儲けの噂。
ふとしたきっかけから、その仕事を手にしたセバスチャンは、
偶然手に入れたチケットで、パリ近郊へと向かう。
しかし、着いた先で待っていたのは、目を疑うような〝死のゲーム〟だった―


命を賭したゲーム、という発想は、人気シリーズとなった「SAW」
インディペントな風合いは、同じモノクロ作品のダーレン・アロノフスキー「π」
そして撮影監督のタリエル・メルヴァによるカメラワークは、まるでサイレント時代を思わせる。
どこか懐かしく、どこか斬新。オールドファッションなのに、スタイリッシュ。
そんな、不思議な魅力に満ちあふれた作品なのである。


13人が輪になって、銃口を向け合うロシアン・ローレットは、
非合法なギャンブルとして、パリ郊外の屋敷で開催される。
不吉な数字と同じ13人の面々は、どいつもこいつもなかなかの面構え。
その連中が、銃を向け合い、最後の一人になるまで、命を賭け合う。
聞いただけでゾクゾクするような着想の一方で、展開はいたってシンプル。
引き金を引く瞬間の緊迫感、そして文字通り命を削るギリギリの恐怖…
その最大の魅力にフォーカスを当て、息つく暇すらないサスペンスに仕立てる。
ハリウッドではありえない文法で瞬間瞬間を描き出す演出のキレ、
印象的なカメラワーク(もちろん低予算をカバーする面もあるだろうが…)が、
ちょっと考えただけでも、相当に困難なタスクを可能にしている。


セバスチャンを演じる、ゲジゲジ眉毛のギオルギ・バブルアニも印象的だ。
監督の弟だということだが、危険なゲームに巻き込まれ、
どんどんと疲弊していく青年を、ものの見事に好演している。
いやだいやだといいながら、どこか死に魅せられていくような感もあるのがいい。
セリフは決して多くないのだが、怯えた目で演技する、そのスタイルやよし、である。


ラストの後味の悪さは、少々微妙な面もあるが、
どだいこの題材で、スッキリとした余韻を残せるわけもない。
どれが正解ということもないだろうし、これはこれで、この作品らしいというのだろう。
だが、小品ならでは、のよさが光る作品なので、
おそらくハリウッド・リメイクでは、このラストの部分が問題になるはずだ。
大きな予算を持て余すことなく、どうこの小品をグレードアップさせるのか。
楽しみでもあり、不安でもあるのだが、やはり見逃せない気はする。