梅田ガーデンシネマで「パリ、ジュテーム」

mike-cat2007-03-25



〝街角の小さな恋物語
2006年カンヌ映画祭「ある視点」部門オープニング作品。
東京から2週間遅れで、ようやくの大阪上陸だ。
「パリ、愛してる!」
アルフォンソ・キュアロンコーエン兄弟ジェラール・ドパルデューら、
世界の21人の名匠がパリを舞台に綴る、18のオムニバス・ストーリー。


モンマルトル、バスティーユ、ピガール、カルチェ・ラタン…
描かれるのは、それぞれのパリ、それぞれの物語、それぞれの愛。
ジーナ・ローランズジュリエット・ビノシュスティーヴ・ブシェーミ
ナタリー・ポートマンファニー・アルダンイライジャ・ウッド
演技派に個性派、若手にベテラン、さまざまなスターによる豪華な顔合わせもうれしい。


「モンマルトル」
監督・脚本 ブリュノ・ポダリデス(「神のみぞ知る」)
出演 フロランス・ミューレル ブリュノ・ポダリデス
モンマルトルで駐車スペースを探す寂しい男が出会ったのは…


「セーヌ河岸」
監督・脚本 グリンダ・チャーダ「ベッカムに恋して」
出演 レイラ・ベクティ シリル・デクール
セーヌ河岸で友人とナンパを繰り返していた青年フランソワが、
アラブ系の美しい女性ザルカと出会い、こころ惹かれる―


「マレ地区」
監督・脚本 ガス・ヴァン・サント「マイ・プライベート・アイダホ」「エレファント」
出演 マリアンヌ・フェイスフル イライアス・マッコネル ギャスパー・ウリエル「ハンニバル・ライジング」
英国人女性と連れ立って、街を印刷所を訪れたガスパールは、
そこで見かけた青年エリに興味を惹かれ、熱心に話しかけるが…


「チュイルリー」
監督・脚本 ジョエル・コーエンイーサン・コーエン「ファーゴ」「未来は今」
出演 スティーヴ・ブシェミ ジュリー・バタイユ
地下鉄チュイルリー駅のホームで、アメリカ人観光客で遭遇する、不条理な出来事―


「16区から遠く離れて」
監督・脚本 ウォルター・サレス(「モーターサイクル・ダイアリーズ」「ダーク・ウォーター」)&ダニエラ・トマス
出演 カタリーナ・サンディノ・モレノ「そして、ひと粒のひかり」
パリ郊外から、地下鉄を乗り継ぎ、16区へ向かうブラジル系移民のアナ。
託児所に生まれて間もない我が子を預け、向かう先は―


「ショワジー門」
監督・脚本 クリストファー・ドイル(「ブエノスアイレス」「レディ・イン・ザ・ウォーター」の撮影監督)
出演 バーベット・シュローダー(「運命の逆転」の監督
13区のチャイナタウン。シャンプーのセールスマン、アイニーが訪れたのは、
マダム・リーの美容院。カンフーで出迎えられたアイニーだったが…


バスティーユ
監督・脚本 イザベル・コイシェ(「死ぬ前にしたい10のこと」
出演 セルジオ・カステリット ミランダ・リチャードソン レオノール・ワトリング「トーク・トゥ・ハー」
離婚を切り出すため、カフェに妻を呼び出した夫は、その妻から思わぬ告白を受ける…


「ヴィクトワール広場」
監督・脚本 諏訪敦彦
出演 ジュリエット・ビノシュ「イングリッシュ・ペイシェント」「ショコラ」) ウィレム・デフォー「プラトーン」
無邪気にカウボーイを信じていた幼い息子ジュスタンを失い、
悲しみに暮れるスザンヌが出会った奇跡、それは―


エッフェル塔
監督・脚本 シルヴァン・ショメ「ベルヴィル・ランデブー」
出演 ヨランド・モロー ポール・パトナー
パントマイムを演じる孤独なピエロが奏でる、おかしな物語―


「モンソー公園」
監督・脚本 アルフォンソ・キュアロン「天国の口、終わりの楽園」「トゥモロー・ワールド」
出演 ニック・ノルティ リュディヴィーヌ・サニエ「焼け石に水」「8人の女たち」
モンソー公園近くで待ち合わせる、初老の男と若い女
親密そうに語り合う2人は、どうやってギャスパールという人物から逃げるか、だった―


「デ・ザンファン・ルージュ地区」
監督・脚本 オリヴィエ・アサイヤス「パリ・セヴェイユ」
出演 マギー・ギレンホール「セクレタリー」) リオネル・ドレー ジョアンナ・プレイス
アメリカの女優リズは、映画の撮影で訪れたパリで、ちょっとした冒険を楽しむ。
ドラッグ・ディーラーの男に気を惹かれたリズだったが…


「お祭り広場」
監督・脚本 オリヴァー・シュミッツ「マパンツラ」
出演 セイドゥ・ボロ アイサ・マイガ
広場で何者かに刺されたアフリカ系住民ハッサンの治療に当たるソフィ。
2人はかつて、偶然の出会いを経験していた―


「ピガール」
監督・脚本 リチャード・ラグラヴェネーズ「フィッシャー・キング」などの脚本家)
出演 ファニー・アルダン「永遠のマリア・カラス」) ボブ・ホスキンス「ヘンダーソン夫人の贈り物」
風俗店が立ち並ぶ歓楽街ピガール。
のぞき部屋で顔を見合わせる2人の男女。いいムードかと思いきや…


「マドレーヌ界隈」
監督・脚本 ヴィンチェンゾ・ナタリ「NOTHING ナッシング」
出演 イライジャ・ウッド([「ロード・オブ・ザ・リング」3部作) オルガ・キュリレンコ ウェス・クレイヴン(吸血鬼の犠牲者)
深夜の街で青年が目撃したのは、いままさに人を餌食にした、美しいヴァンパイアだった―


「ペール・ラシェーズ墓地」
監督・脚本 ウェス・クレイヴン「エルム街の悪夢」「スクリーム」
出演 エミリー・モーティマー「マッチポイント」) ルーファス・シーウェル「トリスタンとイゾルデ」」) アレクサンダー・ペインオスカー・ワイルド
生真面目で堅物なウィリアムと、不思議ちゃん系のフランシス。
婚前旅行で訪れたパリの墓地で、2人は口論を始めるが…


「フォブール・サンドニ
監督・脚本 トム・ティクヴァ「パフューム ある人殺しの物語」
出演 ナタリー・ポートマン「レオン」スター・ウォーズエピソードⅠ〜Ⅲ) メルキオール・ベスロン
盲目の学生トマのもとにかかってきた、恋人フランシーヌからの、別れを告げる電話。
出会いからこれまで…、トマの脳裏に甘く、切ない思い出がよぎる―


カルチェラタン
監督・脚本 フレデリック・オービュルタン&ジェラール・ドパルデュー
出演 ジーナ・ローランズ「グロリア」) ベン・ギャザラ(「ドッグヴィル」) ジェラール・ドパルデュー「シラノ・ド・ベルジュラック」
離婚調停に備え、カフェで待ち合わせたベンとジーナの夫妻。
お互いの新しい恋人との生活に向け、どちらともなく出された提案とは…


「14区」
監督・脚本 アレクサンダー・ペイン「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」
出演 マーゴ・マーティンデイル(「ミリオンダラー・ベイビー」
デンバーで郵便配達を務めるキャロルは、長年の夢でもあったパリ旅行を実現させる。
ひとり旅に味気ない想いを感じつつも、街をめぐるキャロルは、14区の小さな公園で〝ある想い〟に気づく―


お気に入りは、ペインらしいペーソスに満ちた傑作「14区」、
ブシェーミのとぼけた味わいと、コーエン兄弟の悪趣味ぶりが光る「チュイルリー」、
おかしくて、やがて悲しき、そしてほっこり…の「エッフェル塔」、
「16区を遠く離れて」の切なさも、もうグッとこころをとらえられる。
そして、ファニーアルダンとボブ・ホスキンスのやりとりが楽しい「ピガール」、
オスカー・ワイルドの墓前でのやりとりがおかしい「ペール・ラシェーズ墓地」もいい。


そして、最終章「14区」から、それぞれのエピソードが交錯するエンディング…
頬を心地よい涙が伝う。パリへの郷愁、そして愛慕が、胸を突く。
通常、オムニバス映画というと、散漫な印象を受ける作品も少なくないが、
この映画に関しては、散漫さなど、欠片ほども感じられない。
美しいだけでなく、哀しく、切ないパリ。そして楽しく、陽気なパリ。陰気なパリ。
パリのすべてが織り込まれた、極彩色の、そして最高のタペストリーのようでもある。


豪華監督、豪華スターの顔ぶれだけで終わらない、たまらない傑作。
観終わって、想いはもちろんただひとつ。「パリにまた、行きたい」
まさしく、〝PARIS, JE T'AIME〟な作品に、シビれまくったのだった。