敷島シネポップで「ポイント45」

mike-cat2007-03-22



〝女の武器は45口径(ポイント45)より危険。〟
「バイオハザード」「フィフス・エレメント」の、
ミラ・ジョヴォヴィッチが主演する、官能クライムサスペンス。
Flatbush〟の脚本などを手がけた、
ゲイリー・レノンが、自らの脚本で初のメガホンを握る。


NYはマンハッタンのスラム街、ヘルズ・キッチン。
男の名前はビッグ・アル。嫉妬深く、暴力的な小悪党。
女の名前はキャット。いつか街を抜け出そうとする、性悪女。
繰り返されるのは、小競り合いと小さな悪事、そしてセックス。
代わり映えのしない毎日と、アルの暴力に嫌気が差したキャットは、
ついに行動を起こす。女の武器、Lip(唇)とHip(お尻)とTits(おっぱい)を使って…


覚悟はしていた。このテの低予算クライム・サスペンスというと、
佳作傑作の類は20本に1本あればいい、というのが一般的な基準だろう。
その程度の期待値で観れば、脚本でも、会話でも、映像でも、
何かひとつ取り柄があれば、それなりには楽しめるというものだ。


だが、この作品に関していえば、そんなユルい期待値で観ても、正直きつい。
30分番組で十分な薄い内容、感情移入できない登場人物、
おそらくリアルなのだろうが、かといって味があるわけでもない会話の数々…
それが、何ともぎこちないテンポで、ゆるゆるだらだらと描かれていく。
ただ、ひとことでいうなら、眠い。
ミラ・ジョヴォヴィッチのヌード以外、特にみどころのない、退屈な作品だ。
そのヌードとて、観て、思わず…みたいな、レベルとはとてもいえない。


そのミラとて、半端な悪女を演じたことで、その魅力は半減してしまっている。
ストーリーの基本は、暴力をふるう男に悩まされる女の逆襲だ。
当然、そこには、ある種の爽快感があって然るべきだろう。
荒唐無稽なら、荒唐無稽で構わないし、狡猾なら狡猾で、それも構わない。
そこにスタイルがあったり、かっ飛んだ痛快さがあったり、
シビれるような悪女っぷりを見せつけられれば、復讐劇はつねに面白い。
だが、その復讐が何とも味気ない。
他人を理由する手口も、おざなりならば、復讐の結果もおざなり。
それでいて、「どう? わたしって悪い女?」的な気取りばかりは鼻につく。


ミラの女っぷりにも問題がある。
ビッチならビッチでいいのだ。
そこに匂い立つような危険な雰囲気が醸し出されていれば。
だが、この作品でのミラは、ひたすら〝場末〟だ。
品もなければ、頭もよくない。せっかくの〝女王フェイス〟が、ただの安い女に成り下がっている。
出てくる登場人物がどいつもこいつも激安な中、
どこか際立つ違いがあれば「おっ」となるのだが、そんなものは皆無。
つまらない、くだらない連中とまったく同じレベルの安さで、観るものをガッカリさせてくれる。


「アルのそれは大きかった」とキャットが告白する、破天荒なスタートの割に、
そのまま盛り上がりはほとんどないまま、ずるずるとエンディングへ。
96分間という短い尺にもかかわらず、まだ終わらないのかがやたら気になる。
期待してなかったはずなのに、それを下回る駄作ぶりで、まさかの失望を味わう。
よく、レンタル(DVD、もしくはビデオ)で十分、という言い方があるけど、
たぶん、家で観てたら退屈すぎて寝てしまうに違いない。
何だかもう少し、作りようがあったんじゃないか、と、首をひねるばかりだった。