TOHOシネマズなんばで「ゴーストライダー」

mike-cat2007-03-05



〝拳(フィスト)にチェーン、魂(ソウル)に正義。
 運命の鎖に繋がれたアナザー・ヒーロー。〟
スパイダーマン」「X−メン」「ハルク」のマーベル・コミックが放つ、
ちょっとツウなダーク・ヒーローが、ついに実写版で映画化。
監督は「デアデビル」「エレクトラ」や、
アーヴィング原作「サイモン・バーチ」のマーク・スティーヴン・ジョンソン。
そしてもちろん、主演はアメコミ・ファンを公言する、オスカー俳優ニコラス・ケイジ


ゴーストライダー。それは、魔王メフィストに魂を売り、
その手先として人間界に逃げた悪魔や魂を冥界に連れ戻すバウンティ・ハンター。
呪われた魂をめぐり、最後のゴーストライダーが姿を消して150年。
病魔に冒された父を救うため、スタントマンの青年ジョニーは、メフィストに魂を売った。
永遠の愛を誓った恋人ロクサーヌに背を向け、一人、旅に出たジョニーは、
いつしか、不死身のスタントマンとして、その世界の頂点に君臨するようになった。
そして、死に魅せられたかのようなスタントを繰り返すジョニーは、ある時を待っていた−


お好きなヒトが、お好きなヒトと、お好きなヒトのために作った映画、という感じである。
監督のマーク・スティーヴン・ジョンソン、そしてニコラス・ケイジと、
ともにアメコミの世界が好きで好きでしょうがない、というのが伝わってくる。
「スーパーマン リターンズ」で夢破れたケイジだが、
その情熱を自身「特別なもの」という作品に思う存分ぶつけた印象だ。
珍しくヅラ(植毛?)まで被り、悪魔に魂を売ったスタントマン、ジョニー・ブレイズを演じる。


ゴーストライダーとしての見せ場のほとんどは、ケイジの顔ではなく、炎に包まれたドクロ。
これほど贅沢なオスカー俳優の使い方もなかなかないが、
(「X−メン」の不自然なストーム=ハリー・ベリーというのはあったか…)
それはそれで、ニコラス・ケイジが、キャラ重視でエゴを抑えこんだ結果とも取れる。
その分、ちょっとユーモラスなジョニー・ブレイズの一面なんかを、
その抜群の演技力できっちりカバーしているのだから、文句なしといっていい。


こうしたアメコミ映画で、もっとも大事な雰囲気や、ヒーローがらみのギミックもいい。
原作コミックの「ゴーストライダー」のイメージを守りつつも、
現代的なセンスを取り込み、実写でも映えるようなビジュアルに仕上げている。
ジョニーのチョッパーが、ゴーストライダーのマシンへと切り替わるシーンのCGなんか抜群だ。
そして、その爆走シーンのカッコよさたるや、もうストーリーがなくてもいい感じ。
挙げ句にその炎の爆走がもたらす、街への大被害の顛末なんかも描かれていて、思わず楽しくなる。


ライダーを導く、なぞの老人〝ケアテイカー〟を演じるサム・エリオットも渋い。
「トゥームストーン」「ハルク」などでも存在感を示していたエリオットだが、
この作品でのケアテイカーは、その中でも群を抜く(ような気がする)。
バイクといえば、ゴージャス美女はつきものだが、
ゴーストライダーの恋人ロクサーヌを演じる、
エヴァ・メンデス(「最後の恋のはじめ方」「レジェンド・オブ・メキシコデスペラード」)はかなりいい。
ブロンド美女じゃなく、ラテン美女というところがいかにも今っぽいが、
むちむちな胸元、色っぽい腰つきをこれでもかと強調するあたり、
何だかこの映画のムードにぴったりで、まさにベストマッチという言葉が思いつく。
メフィストを演じた「イージー・ライダー」ジェーン・フォンダは、意外に印象薄。
あの〝キャプテン・アメリカ〟も、歳を取ったなあ、とちょっと失望したりもする。


ストーリーの核となる〝サン・ヴェンガンザの呪われた魂〟のくだりは、
率直にいってしまうと、だいぶ矛盾や破綻を感じてしまうのだが、
悪魔の手先でありながら、最大の武器は〝ペナンス・ステア(贖罪の目)〟だったりする、
ゴーストライダー=ジョニー・ブレイズのちょっと複雑なキャラクターを強調する部分でうまくカバー。
いい意味で、B級映画に徹した作りだから、
あえて突っ込みどころを我慢すれば、その物語世界の魅力にうまく乗っかれる。
アメコミ嫌いの人にはお勧めする気は毛頭ないが、
そこそこお好きなら、かなり楽しめる、悪くない作品ではないかと思う。