ニコール・クラウス「ヒストリー・オブ・ラヴ」

mike-cat2007-03-02



〝その物語はいつか輝く。生き延びていればこそ。〟
ナチスの魔手を逃れたポーランド移民、80歳。
 彼が書いた小説に因んで名づけられた少女、14歳。
 全世界注目の女性作家が綴る、壮大な運命と邂逅の物語。〟


男は、レオ・グルスキ。第二次大戦下、ナチスに蹂躙されたポーランド
スロニム(現在はベラルーシ)から、ユダヤ人迫害を逃れてやってきた80歳。
少女は、アルマ・シンガー。「愛の歴史」という本に出てくる、
すべての少女にちなむ名前をつけられた14歳。
レオの書いた小説の数奇な運命と、ブルックリンに住む2人の奇跡の邂逅−


〝おれの死亡記事が出るときには。あしたか。それとも次の日か。
 「レオ・グルスキはガラクタに埋もれたアパートを遺した」と書かれるだろう。〟
物語は、人生最期の日々を送る、ポーランドユダヤ人のわびしい日常で幕を開ける。
〝人生でやりたいことはひとつ〟だったレオにとって、書くことはすべてだった。
愛する少女のため、イディッシュで描き上げた小説は、戦渦にまみれ、
いつしかスペイン語での出版という、数奇な運命をたどって、数々の人生に影響を与える。


その影響を受けたアルマは、愛する夫を失い、
抜け殻のような人生を送る母を気遣う、ユダヤ系の少女。
でも、母にずっといいたいことがある。<もっと少なく愛してくれないかしら>
自らの名前の由来となった小説のアルマを探し、追い求める。


人類にとって、初めての言語でもある〝手ぶり〟から幕を開け、
一世紀に渡る〝ガラスの時代〟などが織り込まれた「愛の歴史」。
アルマへの愛を滔々と綴ったその物語は、
南米チリのサンティアゴの小さな出版社で出され、
イスラエル青年の手を経て、少女の手にわたることとなる。


決して難解ではないのだが、どこかつかみどころのない物語。
だが、そこに横たわる独特のペーソスが、読む者のこころをとらえて離さない(気がする)。
そこにあるのは、優しさか、それとも、人生の妙味か。
おそらく、きちんとした文脈での理解はできていない気がするが、
いかにも、ブンガクを読んだ、という感覚とともに、じわじわとした感動が迫ってくる。
ワーナー・ブラザーズで映画化決定!〟とのことである。
もしかしたら、豊富なビジュアルが添えられれば、もっと明快に理解できるかもしれない。
まずは、変にスター映画にならないことを祈るばかりだが、同時に期待もしたいな、と。


Amazon.co.jpヒストリー・オブ・ラヴ


bk1オンライン書店ビーケーワン)↓

ヒストリー・オブ・ラヴ
ニコール・クラウス〔著〕 / 村松 潔訳
新潮社 (2006.12)
通常24時間以内に発送します。