梅田ブルク7で「カンバセーションズ」

mike-cat2007-02-19



〝男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト〟
かつて愛し合った2人が、10年ぶりに出逢い、
過ごした一夜を、スタイリッシュに描いたラブ・ロマンスだ。
主演は「サンキュー・スモーキング」のアーロン・エッカートと、
眺めのいい部屋」「ファイト・クラブ」のヘレナ・ボナム=カーター。


舞台はNYのあるホテル。
結婚式のパーティーで10年ぶりに顔を合わせた男と女。
さまざまな思惑をちりばめながら、かつて愛し合った2人が会話を交わす。
かつての思い出、近況、そして誘惑…
男のロマンティシズム、女のリアリズムが交わり合う、夜の行方は−


原題は〝CONVERSATIONS WITH OTHER WOMEN〟
10年の歳月を経て、〝ほかの女〟になってしまった女と、
10年の歳月を引きずり、いまも思慕を捨てられない男の会話劇。
互いに投げかける、謎めかした言葉の数々が、
2人の本当の関係を次第に明らかにしていくのが興味深い。
言ってみれば、〝焼けぼっくいに火が付いた一夜〟なのだが、
そのスタイリッシュな会話、そして映像で、ひと味違う〝一夜〟に仕上げている。


最大の特長は、スクリーンを2分割する画面構成。
同じシーンを映し出す、異なるアングル、異なる視点、異なる時間軸。
時には、実際口に出した言葉と心に秘めた本当の気持ちを、
時には、かつての2人といまの2人を重ね合わせ、2人のロマンスが描かれる。
それは、欲望に嫉妬、未練と後悔…、
かつての記憶すら食い違う、2人の気持ちのすれ違いにも似ている。


おかしいのは、彼女に未練たらたらなクセに、
以前のような長い髪が好きだの、肌が乾燥しただの言ってしまうオトコの浅はかさ。
実際ここまでわかりやすく無神経なオトコもいないだろうが、
細かい点を検証していったら、まあオトコなんて、
どこでどう口を滑らせているか、わかったものじゃない。


だが、そんなオトコに呆れつつも、
その少年ばりのロマンチックさに何となくほだされてしまう女。
2人の思い出を回想する男に、
「ほかの女のことには興味がない」と言い切るリアリズムの一方で、
後悔しつつも、揺れ動く気持ちに抗えない女の曖昧さも面白い。
38歳という年齢を受け入れつつも、
男が現在つき合う23歳の彼女(完璧ボディのダンサー)に嫉妬する。
つくづく、男も女もいろいろあるよね、と何だかヘンな感心をしてしまう。


甘い感傷とほろ苦い余韻、後悔と罪悪感、
そして、波乱のかすかな予感を残し、夜は白々と明けていく。
これをもって〝おとなの恋〟というのは少々憚られるが、
熱いだけでもない、枯れてるだけでもない、欲望だけでも格好だけでもない、
何となくいいなあ、というロマンスの形が、そこにはあるような気がする。
エッカート×ボナム=カーターの演技も見事の一言で、見応えは十分。
単なる他人様の〝焼けぼっくい〟なのに、何だか甘く、切ない気持ちになるのだ。