TOHOシネマズなんばで「ドリームガールズ」

mike-cat2007-02-18



〝夢は永遠に生き続ける〟
コーラスライン」のマイケル・ベネットによる、
伝説的ブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」を、
「シカゴ」の脚本家ビル・コンドンが映画化した話題作。
ジェニファー・ハドソンエディ・マーフィーの助演女優&男優賞など、
発表間近のアカデミー賞では、6部門のノミネート。
ジェイミー・フォックス(「Ray」「コラテラル」「マイアミ・バイス」)、
ビヨンセ・ノウルズ(「オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー」)、
ダニー・グローヴァー(「リーサル・ウェポン」シリーズ)に、
エディ・マーフィー(「ビバリーヒルズ・コップ」)と豪華なキャストを取りそろえ、
シュープリームズダイアナ・ロスをモデルに、
黄金時代のデトロイトモータウンの光と影、栄光と挫折を描くゴージャスな物語だ。


1962年、自動車産業でにぎわうモーター・タウン、デトロイト
ディーナ=ビヨンセ、エフィー=ハドソン、ローレル=アニカ・ノニ・ローズによる、
スターを夢見るグループ〝ドリーメッツ〟は、新人発掘オーディションに臨んでいた。
そこで出逢った中古車セールスマン、カーティス・テイラーJr=フォックスのマネジメントで、
スター歌手のジェームズ・〝サンダー〟・アーリー=マーフィーのバックコーラスに抜擢される。
抜群の歌声で次第に注目を集めた3人組は、ついに〝ドリームズ〟としてデビューのチャンスをつかむ。
だが、リードシンガーはソウルフルな歌声のエフィーから、ルックス抜群のディーナに交代。
成功の第一歩は、それぞれの夢が食い違い始める第一歩でもあった−


この映画の魅力を語り出したら、もうきりがないだろう。
「シカゴ」「プロデューサーズ」などと並ぶ、
ミュージカル映画の傑作がまたも誕生してしまった、というところ。
スクリーンに再現されるモータウン(風)・サウンド、ゴージャスなステージ…
このスペシャルな夢に、冒頭からラストまで圧倒されっぱなしだ。


ダイアナ・ロスシュープリームスマービン・ゲイを思わせる、
華麗なるモータウン・サウンズの裏側のドラマも、もちろん見どころ満載だ。
ソウルフルな歌声と身勝手な性格が災いし、リードシンガーを降ろされたエフィー、
売れるためのお人形シンガーの役目に、いつか疑問を覚えるディーナ、
プロデューサーとして、すべての成功を収めながら、ソウルを失っていくテイラー、
白人層への売り込みと、ソウルの狭間で悩み、麻薬に溺れていくジミー・アーリー、
昔ながらのショウビズのスタイルにしがみつき、ジミーと袂を分かつマーティー=グローヴァー…
それぞれのドラマが絡み合い、時に激しく、時に切なく、感動的なストーリーを紡ぐ。


やはり印象的なのは、20を越える賞に輝く、ジェニファー・ハドソンだろう。
ソウルフルな歌声だけでなく、傲慢さと繊細さを兼ね備えたディーヴァを、
圧倒的な存在感と、ひとことでは言い表せない魅惑をたたえ、演じ上げる。
〝助演〟という言葉で表現するのは、少々違和感すら感じるほど。
(おそらく、映画会社の戦略的な部分で、助演にカテゴライズされたはずだが…)


そしてもう一人の助演賞候補、エディ・マーフィーもたまらない。
超一流のショーマン、エンタテイナーでもあるエディの魅力は、
画面からあふれ、グイグイと観るもののハートに食い込んでくる。
エディの輝きなくして、この映画のスペシャル感はここまで出せなかったはずだ。
キャリア的には近年パッとした作品に恵まれなかったエディだが、
かつての傑作&ヒット作と並び、新たな代表作となったといっても過言ではない。


「Ray/レイ」でのオスカー受賞でノリにノってるジェイミー・フォックスは、
あえて自慢の歌声を(ほぼ)封印、主演格でありながら比較的損な役割となったが、
抑えた演技とその存在感で、作品のクオリティ向上に大きく貢献した。
同じくビヨンセも、華やかでありながら、中盤まではどこか存在感の薄い役柄。
「リードシンガーを任せたのは、特徴のない声で、ミキシングしやすいから…」
なんて言われてしまう、顔とスタイルだけの、カバーガール的な存在。
だが、次第に自らが望む本当の歌、そしてソウルに目覚めていくところが大きな見せ場だ。
もちろん、「リーサル・ウェポン」のマータフ刑事ことグローヴァーの枯れた魅力も見逃せないし、
愛と追憶の日々」「ミッドナイトクロス」のジョン・リスゴーなんかも渋い役柄で登場する。


感動の嵐に包まれる、〝ドリームズ〟のラストステージ。
ため息とともに、ひとつの時代を見守った感慨が、こころと体をしびれさせる。
間違いのない傑作の余韻に浸りながら、劇場を後にする。
向かう先は、もちろんタワーレコード
サントラを片手に、勢い込んで、家路を急ぐのだった。