シネリーブル梅田で「プレスリー VS ミイラ男」

mike-cat2007-01-18



ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)」(大傑作!)「罪深き誘惑のマンボ (角川文庫)」の
ジョー・R・ランズデールの〝Bubba Ho-Tep〟を、
カルトホラー「ファンタズム」のドン・コスカレリが映画化。
主演に「死霊のはらわた」のブルース・キャンベルを迎え、
実は死んでいなかったエルビス御大が、
老人ホームを守るために、ミイラと戦う、というキッチュなホラーだ。


エルヴィス・プレスリーはやっぱり生きていた。
とはいえ、老いて寝たきりとなった〝キング〟は、
ナニを腫らし、ドラッグの後遺症に悩まされる毎日を送っていた。
そんなエルヴィスのいるテキサスの片田舎の老人ホームで、
老人たちの謎の突然死が相次いでいた。
陰謀によって黒人にされたJFKとともに、謎の解明に乗り出すエルヴィス。
だが、そこに隠されていたのは、恐ろしいファラオの呪いだった。


その設定の徹底したバカバカしさに加え、
平均的ハリウッド作品のわずか1%という低予算ならではのチープさには、
ショボさ、くだらなさをはるかに凌駕し、脱力感すら覚えてしまう。
だが、プレスリー役のキャンベルの熱演と、
コスカレリの濃ゆい演出は、その独特の脱力感は絶妙のミスマッチ感を醸し出す。
際どささえ感じさせる老人ホームのペーソスと相まって、
何ともいえない、複雑な味わいに満ちた作品に仕上がっているのだ。


その中でも特筆したいのは、やはりブルース・キャンベルだろう。
演じるプレスリーは、とにかく、いい意味で〝くたばり損ないのクソジジイ〟。
最高にクールな、〝もし、エルヴィスが生きていたら〟像を実現している。
歩行器にもたりかかっていても、電動車椅子に乗っていても、
そこにはどこか〝キング〟の風格と佇まいが感じられるのだ。
老いゆくことの悲哀にまみれつつも、毒づくことは忘れない。
まさしく〝ロックンロール〟な姿で、観るものを笑わせつつも、魅了してやまない。


そんな〝キング〟が、歩行器を振り乱し、
巨大ゴキブリ(どうもスカラベらしいが…)と格闘してみたり、
カウボーイ姿のミイラ(バッバ・ホ・テップ=田舎者の王)と戦ってみたり…
いったい、どんな精神構造で、こういう話を思いつくのか、と苦笑をしつつ、
何でプレスリー、何でミイラ、の説明の巧さに思わず感心し、
そのトンデモストーリーに引き込まれていくのだ。


しかし、何でこう、プレスリーを題材にした映画は面白いのだろう。
エルヴィス(そっくりさん)軍団のスカイダイビングで魅せる、
「ハネムーン・イン・ベガス」(ニコラス・ケイジサラ・ジェシカ・パーカー)にしても、
エルヴィス(に扮した)強盗団がカジノを襲撃する、
スコーピオン」(ケヴィン・コスナーカート・ラッセルクリスチャン・スレーター)にしても、
その大まじめなバカバカしさが、そのまま映画の魅力になってしまう。
こういうほめ方もおかしいのだが、やはりエルヴィスは偉大なのだ。


満足感と、脱力感にまみれたエンドクレジット。
その最後に何と、〝Bubba Nosferatu〟でキングは帰ってくる、との情報が。
どうも、シリーズ化、ということらしい。
邦題は「プレスリーvs吸血鬼」か、「プレスリーvsドラキュラ」か…
〝Bubba Nosferatu and the Curse of the She-Vampires〟は、
2008年米国公開、らしい。
監督:ドン・コスカレリ、主演:ブルース・キャンベルはそのまんま、
ここにいまノってるポール・ジアマッティ(「サイドウェイ」「レディ・イン・ザ・ウォーター」)が加わる。
いったいどんなトンデモ映画になってしまうのか。いまから楽しみで仕方ない。